HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「道草」を再び読み始める

テレビドラマの「漱石の妻」に刺激されて「道草」を読み始めた。著作権切れでKindleで無料で読める。

道草

道草

1ページ、1ページ、間違いなく読んでいる。既読であるにもかかわらず、読んでいてまったく先の展開が思い出せない。ストーリーでなく、ちょっとした独白や、漱石一流の観察力、そしてなによりその描写の力で漱石の小説の「読ませる力」はできているのだと改めて想った。

それにしても、健三とお住の夫婦の間の「ディスコミュニケーション」、そのひやっとしたやりとりがよく伝わる。漱石と鏡子夫人のやりとりがスケッチされていると改めて感じる。たぶん、本作で描かれた養父とのやりとりがが次回、第3回の「漱石の妻」で展開されるのだろう。

漱石の妻、鏡子さんの回想記「漱石の思い出」には、留学先のロンドンから戻った漱石が神経衰弱を患い、妻として家庭を維持するのがいかに大変だったかが生々しく描かれています。でも同じ事が漱石のペンにかかると、産後のヒステリーで精神不安定になった妻と暮らす夫の苦悩として、緻密に描出されます(「道草」)。同じ日々の事でも妻と夫の言い分は全く正反対。お互い、相手が病人で大変だったと語っている。

「夏目漱石の妻」 第1回・第2回 - HPO機密日誌

確かにと頷きながら読んでいる。

「夏目漱石の妻」 第1回・第2回

興味深く見ている。夫婦の在り方とは誠に難しい。現実の伴侶とは誠にやっかいだ。そもそも、漱石の側からみた「夏目漱石の妻」は相当にひどいものであった。「豚」だと。

漱石の夢の女」の吉田先生によればパナマ帽をかぶった庄太郎は漱石自身であるという。庄太郎が気に入った女は漱石が想いをよせた女であり、内面的にいえばアニマである。女と一緒になるとは、底が見えないほどの断崖絶壁から飛び降りるということだ*1。そして、耐えがたいことに豚とはパートナーのことであるという。断崖絶壁から飛び降りれないとは日常に取り込まれることであり、豚のような自分のパートナーと無限に応対しなければならない。豚は落としても落としても、あとからあとから出てくる。限りがない。ぐんにゃりしてしまった庄太郎はしまいには病気になってしまう。

妻は豚か?それとも、女神か? - HPO機密日誌

夢十夜」が書かれたのは、昨日放送の「2回」と来週の「3回」で描かれる時期となる。

明治36年(1903年)に帰朝してからの数年間というのは、金銭的にも家庭的にも漱石の最悪の時期であったらしい。「吾輩は猫である」から職業作家となってから間もなく「夢十夜」は書かれた。男が一番迷う時期というのはほんとうにあるのかもしれない。

今回の演出の方もこのあたりの機微を語っていらっしゃる。

漱石の妻、鏡子さんの回想記「漱石の思い出」には、留学先のロンドンから戻った漱石が神経衰弱を患い、妻として家庭を維持するのがいかに大変だったかが生々しく描かれています。でも同じ事が漱石のペンにかかると、産後のヒステリーで精神不安定になった妻と暮らす夫の苦悩として、緻密に描出されます(「道草」)。同じ日々の事でも妻と夫の言い分は全く正反対。お互い、相手が病人で大変だったと語っている。

ドラマのみどころ | 夏目漱石の妻

「豚」とまで言われた漱石の妻を尾野真千子さんが明るく演じている。同じくNHKのドラマ、「夫婦善哉」以来尾野真千子さん演じる明るい妻には好感を持っている。

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リアル「漱石の妻」、鏡子さんが漱石に嫁して20年。その間の留学の2年間。まあ、なんとはなしに思い起こされる私の個人的な体験がある。そして、私は今年漱石が亡くなった49歳を超えた。よくよく4回までドラマを見てから、新たな漱石像を記してみたい。

そして、成田空港第三滑走路はC滑走路となった

踏み込んだ内容のレポートが公表されている。第3滑走路を正式にC滑走路とし配置を明確にする、空港エリアを1000ha拡張する、運用時間を朝5時から深夜1時とするなど。

成田空港の更なる機能強化に関する 調査報告について(その3)

成田空港の更なる機能強化に関する調査報告について(その3)

仕事がら気になるのは滑走路の配置と拡大エリア

滑走路の具体的な位置及び空港敷地範囲の検討

フリーハンドだがGoogleマップに落としてみた。

新しい成田空港

言うまでも無くGoogleマップで描けば拡大、縮小が容易だ。発表された図からフリーハンドではあるが、再作成することで全体からの位置づけ、圏央道との関係性など明瞭に理解できた。誤解を招くと行けないので、マップ自体へのリンクは張らない。

大変、成田の未来に期待できる計画内容であるとは言える。位置が明瞭になり、想っていたよりもずっと南であることがわかった。これはとりもなおさず、多古町芝山町の負担が大きいということだ。だが、「不眠障害」なる意味不明の言葉があがってきたのは今度の滑走路の反対側の成田側の市議会議員であったことは大変残念だ。しかも、保守系の議員だと聞く。

以前の私の当て推量はまあ50点だったなと反省。

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■追記 平成30年5月21日

地図データを公開していたので追記しておく。

もうここまで来たので、数年前に発表された第三滑走路構想の位置推測をしたGoogleマップを公開しておく。私が資料をみながらフリーハンドで作ったので、正確さは保証のほどではない。

金沢駅の案内所

以前に金沢に行った時、大変感激した。金沢は本当に歴史もあり、文化もあり、建築物にも風情がある。兼六園、伝統工芸に至っては声もでないほどすばらしかった。なおかつ過去の遺産にあぐらをかくのではなく、現在に至るも努力されているなと感心したことがある。新幹線で金沢を出る時ようやく気づいた。新幹線の改札真正面がかなり整った観光案内所だった。最高の立地を観光案内所にしている。私が見たときには、案内所の職員の方が韓国人とおぼしき観光客さんと韓国語で冗談を交わしていらした。工芸品の展示があったり、食事や工芸品体験ができるクーポンが売っていたりと実にいきとどいていた。

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実に、実に、見習うべき姿勢だ。

近代と現代と東京駅と

キッテの屋上庭園にあがってみた。

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現代の超高層ビルを背景に、現代建築の粋であるレトロフィット免震により蘇った東京駅。このコントラストにしびれた。

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夜はなんとはなしに、新幹線も疲れている。昼間の仕事の疲れをひきずりながら、東京ステーションホテルのバー、OAKで杉本さんのオリジナル・カクテル、「東京駅」の上りと下りに癒やされた。

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この界隈は大好きだ。

「もうひとつの京都」を読み始める

レックス・カー氏は凡百の日本人よりも日本の文化がわかっていらっしゃる。門の意味なんてほとんどの日本人は考えたことがない。「三門」と「山門」どちらが正しいかなんて、日本で何人かしか理解していないだろう。

もうひとつの京都

もうひとつの京都

この方の「直言」には愛があるから「直言」も耳に入ってくる。

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この方のお陰で、台湾の友人の言葉がようやく理解できてきている。友にありがとうと言いたい。

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「日本でテロが起きる日」

大変、勉強になった。佐藤優氏に対ロシア外交を語らせると右に出るものはいないのでは。

佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日

佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日

たぶん、タイトルは編集の方でつけたのではないだろうか?日本が外交を誤るとテロが起きないとは限らないが、本書中ではあまりむやみに危機をあおるような書き方ではなかった。本書において、佐藤氏は、中東情勢から、安保関連まで広範に国際情勢を解説してくださっている。昨年の10月に校了しているようだが、実にここまでの1年間の情勢を読み切っている。たぶん、プーチンと安倍首相の16年年内会談まで昨年のうちに読み切っておられた。そして、その会談の結果が出ないであろうことも。中東情勢も、たぶんいままで読んだ中で一番シリアがなぜやばいかわかった。

やはり、現場で身を張ってきた人の言葉はずしりとくる。