HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「夏目漱石の妻」 第1回・第2回

興味深く見ている。夫婦の在り方とは誠に難しい。現実の伴侶とは誠にやっかいだ。そもそも、漱石の側からみた「夏目漱石の妻」は相当にひどいものであった。「豚」だと。

漱石の夢の女」の吉田先生によればパナマ帽をかぶった庄太郎は漱石自身であるという。庄太郎が気に入った女は漱石が想いをよせた女であり、内面的にいえばアニマである。女と一緒になるとは、底が見えないほどの断崖絶壁から飛び降りるということだ*1。そして、耐えがたいことに豚とはパートナーのことであるという。断崖絶壁から飛び降りれないとは日常に取り込まれることであり、豚のような自分のパートナーと無限に応対しなければならない。豚は落としても落としても、あとからあとから出てくる。限りがない。ぐんにゃりしてしまった庄太郎はしまいには病気になってしまう。

妻は豚か?それとも、女神か? - HPO機密日誌

夢十夜」が書かれたのは、昨日放送の「2回」と来週の「3回」で描かれる時期となる。

明治36年(1903年)に帰朝してからの数年間というのは、金銭的にも家庭的にも漱石の最悪の時期であったらしい。「吾輩は猫である」から職業作家となってから間もなく「夢十夜」は書かれた。男が一番迷う時期というのはほんとうにあるのかもしれない。

今回の演出の方もこのあたりの機微を語っていらっしゃる。

漱石の妻、鏡子さんの回想記「漱石の思い出」には、留学先のロンドンから戻った漱石が神経衰弱を患い、妻として家庭を維持するのがいかに大変だったかが生々しく描かれています。でも同じ事が漱石のペンにかかると、産後のヒステリーで精神不安定になった妻と暮らす夫の苦悩として、緻密に描出されます(「道草」)。同じ日々の事でも妻と夫の言い分は全く正反対。お互い、相手が病人で大変だったと語っている。

ドラマのみどころ | 夏目漱石の妻

「豚」とまで言われた漱石の妻を尾野真千子さんが明るく演じている。同じくNHKのドラマ、「夫婦善哉」以来尾野真千子さん演じる明るい妻には好感を持っている。

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リアル「漱石の妻」、鏡子さんが漱石に嫁して20年。その間の留学の2年間。まあ、なんとはなしに思い起こされる私の個人的な体験がある。そして、私は今年漱石が亡くなった49歳を超えた。よくよく4回までドラマを見てから、新たな漱石像を記してみたい。