HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「錦旗革命・昭和維新の欺瞞」

昭和天皇の研究」は日本国民全員が読むべき書だと確信する。昭和天皇の偉業を私達が認識しないと、次の世代へこの日本をきちんと渡していけない。

「吾人は軍人の口から、しばしば天皇への批評を聞き、二・二六反乱の当時、もし天皇が革新に反対されるなら、某宮殿下(秩父宮)を擁して陛下に代うべし、という言葉すら聴かされた」と、当時外務大臣だった重光葵氏は記している。

統帥権だの、錦旗革命だのという軍人の言葉こそが最大の不敬であった。兵隊には「天皇万歳!」と叫ばせながら、自分たちは天皇を変えることをも辞さなかったなど言語道断。山本七平の「私の中の日本軍」を読んで、「これは兵隊根性だ」などと書いた自分の不明を恥じる。「私の中の日本軍」は、山本七平が当時の状況、当時の戦友にこころをよせて書いた文章。兵隊の立場で書かれていて当たり前だった。「昭和天皇の研究」を読んで、山本七平の視線は、遙かに遠く、高かったことを知った。

軍部の中でも、二・二六反乱の首謀者であった磯部浅一に至っては、憲法を守る君主である昭和天皇の意思をねじまげて受け止めていた。あえて、id:jinkenvipさんのブログから引用する。

磯部浅一は、まったく、天皇陛下に対してのみならず、果ては天照大神まで呪い、天神地祇に対し奉りて「(これ)ほどのなまけものなら日本の神様ではない。……そんな下らぬ神ならば、日本の天地から追い払ってしまうのだ」(167P)などと言うが、皇国に生まれたる者ならば禽獣でも思わないだろう。本当に禽獣よりも害がある。「涙も血も一滴ない悪鬼になるぞ」(170P)と本人が言っているように、まさに異端であり悪魔だ。

http://d.hatena.ne.jp/jinkenvip/20070927/1190893593

山本七平が書いているように、近衞文麿を例に出すまでもなく、死刑となり、悪鬼、悪魔となった磯部浅一は二・二六反乱以後の政治家を脅かし続けた。まさにテロに日本の政党政治が屈したのだろう。

自分の身に引き寄せて言えば、成田も、千葉もテロに屈した。

その方は、杖をついて必死の形相で仕事にあたられていた。そう、弁護士だった。ずいぶん前になにかの会合でお会いした。

まだそんなお年ではないのに杖をつくような状態になってしまったのか、その時はわからなかった。

ずいぶんたってから、テロによって半身不随の状態になってしまったのだと知った。そして、数年前に亡くなられたと聞いた。弁護士事務所も閉鎖されたと聞いた。

その方は、誰もが尻込みされた千葉県の土地収容委員長に就任された。そして、文字通りの闇討ちに遭い、前述の半身不随の状態になり、最期は老衰とはほどとおい年齢でありながら、亡くなられた。

この方の後、ずいぶん長い間、テロを恐れて委員長に就任される方がいなかった。テロに屈したのだ。「成田」以外にも影響は大きかったと聞いている。「闘争」をしている方々はそれを「勝利」と呼ぶのだろう。

「成田闘争」の犠牲者 - HPO機密日誌

テロは恐ろしい。しかし、テロに屈してはならない。昔も今も、平和だ、平等だという社会主義を志向連中が、クーデターや、テロを平気で行うことが私には全く理解できない。「銃口から革命は生まれる」?ふざけろと。銃口から生まれた政権はどこまでいっても銃口から逃れられない。

まして、昭和天皇が守った立憲君主制、五箇条の御誓文以来の精神を、磯部浅一も軍部もまったく踏みにじった。その結果が太平洋戦争の惨禍であった。一体、彼らは自分たちが救おうとして貧農出身の兵隊達を彼らの見知らぬ地で万人、百万人単位で死においやってなにが昭和維新なのだろう?なにが革新なのだろう?昭和天皇のお心、昭和天皇が敗戦の瀬戸際までも守ろうとした立憲君主制とはあまりにほどとおい。

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"5jo1" by Government of Japan - 慶應四年戊辰三月 太政官日誌 第五。1876年発行。. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

あ、統帥権について本書からちょっとだけメモ。

「第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス ②凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅国務大臣ノ副署ヲ要ス」は、「天皇は閣議の決定に対して拒否権を有せず。また閣議に出席し発言することを得ず。すべて法律・勅令・その他国務に関する詔勅は、国務大臣の副書なきものは無効なり」といったような「現代語訳」をつくれば、はじめてその意味がはっきりとする。

第11条に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」とあっても、「国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」であり、閣議決定された大臣の方針を拒否することはできない。方針を示すことも明治立憲君主制ではありえない。本当に軍部、革新官僚北一輝などは、天皇制をねじまげている。改めて怒りを感じた。