HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「空襲警報」(ネタバレあり)

コニー・ウィリスの出世作であり、オックスフォード大学史学部シリーズの第一作、「空襲警報」を共感をもって読み終えた。

ドゥームズデイブック」のヒロイン、キヴリンもしっかりと登場する。ダンワージー先生は言わずもが。猫の話しを含めて、「史学部」シリーズのプロットはここに全て暗示されている。

コニー・ウィリスは、女性を類型的に明確に描いている。自分の役割や信仰にのめり込む女性。愛という言い訳で自我が捨てられない女性。自らを犠牲にしても、相手を助けようとする献身的な女性。恋に燃え上がる女性。幼さの残る女の子。女流作家だというバイアスがかかっていることは否定しないが、実に女性をよく見て書いている。ああ、こういう女性がいるなと、ついつい身近にいる人物と比べてしまうことしばしであった。

予想している時の方が怖い - HPO機密日誌

この歴史の重み、歴史の当事者にとっての痛み、迫真性をフィクションを超えて、この「史学部」シリーズは伝えてくれる。突然、ドイツからの連夜の爆撃が続くロンドンを体験せざるをえなくなったバーソロミュー君が次第に歴史の一部となりきっていく姿がすばらしい。

ただ、このラストにダンワージー先生が示唆しているものは、単に歴史の重み、思い入れということを超えて、ダンワージー先生がラングビーだったのではないかという受け止め方をしてしまった。その方がSF的ひねりにもなると考えたのだが。どうも、違うようだ。