HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「ナイルに死す」

短編集「空襲警報」収録の「ナイルに死す」を読了した。

なるほどと思った。小説そのものよりも、作者の後書きに膝を打った。

映画「エイリアン」は、スクリーンに怪物が現れるその瞬間までの方が絶対的に怖いし、これまた私の持論では、「ジョーズ」にとって最大の幸運は、機械仕掛けの鮫が使いものにならなかったことだ。鮫は水にいれるたびに沈んだり爆発したりした。そのため、かわりにブイを使って撮影せざるをえず、そっちの方がーーー影のような、正体不明の”なにか”が水面下にいるほうがーーーはるかに恐ろしくなった。
ほんとうに怖いのは、正体不明のなにかだ。

すごーく、納得。

書評を読んでいると、後半からクライマックスにかけてが迫真であり、泣けるSFだとされているが、前半を読み通しながら、これから起こる悲劇の予兆の方がつらかった。最初に書評を読みすぎたのかもしれない。実際にストーリーが進んでいって、ああ、やっぱりなとしか思えなかった。

スプラッター映画でも、「その」場面に至る前に、突然犬が吠えるとか、どこからともなく足音が近づいてくる場面の方が怖かったりする。この小説でも、前半を読んでいたときの方が冗長ではあっても、迫り来る恐怖を感じていた。本に影響されやすい私は、自分の体調さえ風邪引きのような感じになってしまったほどだ。

予想している時の方が怖い - HPO機密日誌

ちなみに、この「ナイルに死す」自体はじわじわくるというより、ちょっと冗談?考えすぎ?みたいな感じで、僕にとっては怖くなかった。