HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

予想している時の方が怖い

怒濤のクライマックスというので、期待していたがすんなり読了してしまった。あまりのひねりのなさになにか読み落としたのではないかと悩んでしまった。

書評を読んでいると、後半からクライマックスにかけてが迫真であり、泣けるSFだとされているが、前半を読み通しながら、これから起こる悲劇の予兆の方がつらかった。最初に書評を読みすぎたのかもしれない。実際にストーリーが進んでいって、ああ、やっぱりなとしか思えなかった。

スプラッター映画でも、「その」場面に至る前に、突然犬が吠えるとか、どこからともなく足音が近づいてくる場面の方が怖かったりする。この小説でも、前半を読んでいたときの方が冗長ではあっても、迫り来る恐怖を感じていた。本に影響されやすい私は、自分の体調さえ風邪引きのような感じになってしまったほどだ。

コニー・ウィリスは、女性を類型的に明確に描いている。自分の役割や信仰にのめり込む女性。愛という言い訳で自我が捨てられない女性。自らを犠牲にしても、相手を助けようとする献身的な女性。恋に燃え上がる女性。幼さの残る女の子。女流作家だというバイアスがかかっていることは否定しないが、実に女性をよく見て書いている。ああ、こういう女性がいるなと、ついつい身近にいる人物と比べてしまうことしばしであった。

ストーリーテリングは買うが、やはりかなり有閑な米国人読者向けの本だ。その意味で、「インタビュー・ウィズ・バンパイア」のアン・ライスを思い出した。

夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)

夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)