ここのところ、猛烈に恋愛小説が読みたかった。ツイッターの広告のちょっとした恋愛漫画ですらぐいぐい読んでしまってた自分がいた。どうしようもない恋愛への渇きは五十代にもなって身体も衰えているのに変わらないらしい。
そんな中で、宮本輝の「錦繍」を一気読みしてしまった。軽い気持ちで読み始めたら止められなかった。離婚した元妻と元夫の手紙のやりとりで物語られる、恋いと愛欲と人生の真実の物語。男の不誠実さ、自己憐憫が様々な形で描かれていた。物語の背景で流れるモーツァルトが悲劇的に響く。「恋しい女」を読んで以来、久しぶりに自分の罪と汚れを自覚せざるを得ない小説体験だった。
中堅ゼネコンの二代目社長で、会社をつぶし、資産を切り売りしながら生活している。娘は一人、妻とは死別。愛人を二人もち、責任感のない生活をだらだらと続ける男の話し。理性も明晰、身体も健康でも、真摯さがない。読み終わって吐き気がした。
真摯さとは知情意が統合されていること - HPO機密日誌
男は自分の欲望を追い求め続けると醜悪になっていく。男は女の下着を洗っている位がちょうどいい。女の作男になっているくらいがちょうどいい。離婚してから10年以上。そう思ってきた。それが、どうもここのところ感情的に不安定になっているようだ。子供のことが引き金だったのかもしれない。恥ずかしいことだと思う。