HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「安楽死を遂げるまで」

医療関係の知人が「衝撃的」だったというので読んだ。「安楽死」、「尊厳死」が欧米では受け入れられてもなぜ日本では拒絶されるのかが伝わった。

安楽死を遂げるまで

安楽死を遂げるまで

 

夢と現実を一緒にするなと言われそうだが、以前安楽死を迎える夢を見たことがある。癌で苦しみぬいて、もう殺してくれと懇願する夢だ。ベッドに横たわり、注射針から安楽死に至る薬が身体を駆け巡る感覚と恐怖で目が覚めた。かなりリアルな夢だった。自分が回復する確率が殆どないと分かっていても、自ら死を選ぶことはかなりの恐怖なのだと思う。

死ぬことはやはり苦しいこと、惨めなことなのだと改めて想う。50をすぎるとここが痛い、あちらの動きが悪いだの出てくると、改めて加齢と死を幻視する。死ぬことは決して格好良いことではない。

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本の構成として、著者の宮下氏が根拠地を置く欧州からルポルタージュが始まるのがわかりやすい。私は以前から日本のいくつかの事件がなぜこんなに混乱するのか理解できていなかった。家族よりは恋人を連れ立って安楽死を補助する医者や、組織を頼ってくる「個」が前面にでた文化はわかりやすい。安楽死であったはずの事件が家族が生前とその後で言論を翻すにいたる過程も、欧州の事例が紹介された後で日本の事例が取り上げられると対比の中で大変分かりやすい。

この対比の構成は宮下氏のバックグランドとも関わっていることが最後の方で明かされる。宮下氏1994年から米国のウェストバージニアに留学していたとある。私もたまたま同時期に比較的近くに留学していたので感覚がわかる。日本で育ちながらも、欧米で個を確立し、主張し続けなければ生き残れないと。言わば文化のバイリンガル、三点測量のできる方だからこそこのような著書になったのだと理解する。

宮下 洋一のプロフィール | JBpress(Japan Business Press)

 これからの自分の人生を考える上で、大変貴重な本を読ませていただいた。リビングウィル、自分の死後に対するメッセージを考え直す機会としたい。