HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

命の源

夢を見た。

彼女とは息が合うわけではなかったが、仕事の関係がありパートナーとなった。二人でアフリカに旅行するのが夢でお金を貯めて、数年がかりで実現させた。大きな視界いっぱい広がる縦穴のある台地のホテルに泊まった。各部屋にテラスが付属していて、「穴」の情景が名の前に広がるモダンなホテルだった。私は仕事の遠隔ミーティングがあり、部屋に入るのにだいぶ遅れた。私が部屋に入り、彼女と合流した時には彼女は無表情に坐って、目の前に広がる穴と崖の景色をベランダから眺めていた。数年がかりの夢を実現させたのに、交わす言葉も薄く残念な想いばかりが募る旅行だった。

帰国してから彼女とは生活があわずに別れてしまった。職場で特殊なバランスを取る機材を開発する仕事に没頭する私は、たまたま同僚を訪ねてきた彼女と久しぶりに出会った。彼女が広げたまま席を外してしまったパソコンを見ると、スチュワードの青年と二人でハングライダーに載って「穴」を飛行して撮影した動画が映っていた。初めて、「穴」の中にも幾重にも「穴」があり、緑が生い茂り、鳥が飛び交う構造になっていることを知った。ああ、こここそが命の源なのだと直観した。そして、私は彼女とこの体験を共有しなかったからこそすれ違ってしまったのだとも知った。

あの穴はアフリカの穴ではなく、「小さな石」の「穴」だったかもしれない。男は女のために穴に飛び込めないと一緒にはなれないのだろう。

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