HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「もはや老人はいらない!」

タイトルは「もはや老人ホームはいらない」であるべきでは?筆者は、施設の運営を十分に経験しておられる高齢者の意思、個別性を重視するお立場なので、「老人はいらない」とは一言も主張しておられない。

もはや老人はいらない!

もはや老人はいらない!

  • 作者:小嶋 勝利
  • 発売日: 2020/07/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

結論から言えば、高齢者を「介護」すること自体がナンセンスであり、2000年の介護保険導入自体が間違っていると主張しておられる。医療は介護を兼ねることができるが介護は医療を代替することはできない。介護保険は、健康保険の増大を抑止するために導入されたはずなのに医療費は膨張を続け、介護業界も成長を続け、国民の保険は増え続けるばかりであると。民間の介護施設はほぼすべて医療業界のように標準化されておらず、職業としても評価されておらず、失業対策に過ぎないと。医者は尊敬されても、ケアマネージャーは永遠に敬意を払われる職業にはならない。医療では回復を目的とし、QoLの回復がありうるが、介護では維持が目的であり、機能回復はない。希望ももな。介護保険も、民間の介護を扱う施設もやめて、医療に包括されるべきだと。

もうなんとも読み終えて、介護業界に希望はないのだと納得した。

それでも、昨今の高齢者が「尊厳死」的な死を選ぶことには批判的であり、「終の棲家」ではなく高齢者の状況に応じて施設を選ぶべきだというお立場は、プラグマティックな知恵を感じた。「年寄り叱るな、行く道じゃ」とはよく言われるが、自分自身が高齢者になっていくことを考えれば、筆者の立場、主張は自ずと理解されるのかもしれない。しかし、マクロで見るとほぼ確実に国から市町村、地域の持続可能性でいえば厳しい道を突きつけているように思える。

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