HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

大変興味深い本だった。初めて、現代の20代が理解できそうな気になれた。そもそも、私にとって「ゆとり教育」以降の人達は、価値感が大きく違うという印象がある。私の頃はまだばんからというか、若い日に苦労は勝手でもしろ、どこまでも一生懸命働くことがかっこいいという風潮が残っていた。しかし、いまの若い人達は「苦しいと想ったら逃げろ」、「自分のいやなことは一切しなくていい」という教育環境で育ったように私には見える。

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

そんな世代と私との中間の世代であるシロクマ先生、熊代さんが書かれた本書には、自分のことよりも自分の子供や、部下など、自分に近しいものの成長を心から喜べるか否かが、子供と大人の違いなのだと主張している。ご自身がプロゲーマーじゃね?、くらいに自分のことに集中していた時期から、結婚や、子供を持つ体験から別の人生の価値を見いだした経験が大きいと書かれている。そうか、いかに現代の二十代にドラクエのように経験値を積み重ねさせ、自分のために生きるよりも、人のために生きることが喜びが多いかを分かってもらえれば良いのかと。

内容理解のために目次を引用しておく。

第1章 「若さ志向」から「成熟志向」へ
第2章 「大人」になった実感を持ちづらい時代背景
第3章 「大人のアイデンティティ」への軟着陸
第4章 上司や先輩を見つめるポイント
第5章 後輩や部下に接するとき、どう振る舞うか
第6章 「若者」の恋愛、「大人」の結婚
第7章 趣味とともに生きていくということ
第8章 「歳を取るほど虚無」を克服するには

ただ、私の経験からすれば、仕事や、人生における「強さ」とは認知的な価値の理解よりも、実際にどのような生活をするかの習慣が大きいように思えてならない。繰り返すが、いかにドラクエのように日常の生活そのものが修行であるか、すこしずつ道しるべを踏んでいけるか、若い人に教育プログラムを組めるかあまり自信がない。

別の視点で言えば、私の年代になっても若者そのものの価値感の人もいないでもない。人生百年時代の矛盾とも言えるが、いくつになっても「若い」ことが価値があるとされている。50代、60代になっても身体を鍛え、新しいものに挑戦し、若者ぶった格好をすることが価値があるとされている。

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しかし、この価値感ではいくつになっても「自分」が先に立って、後輩や、子供の成長のサポートにまわる喜びの実感が語れない。人間、どこかで身を引いて後進の指導、サポートに当たるのが本当ではないか。というか、老境になっても自分、自分となるので、若い者達が進出する余地がなくなる。

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もし若く居続けようとするなら、自分のステージを常に変革していく必要がある。自分自身が「先輩」でしかも「若く」居続けようとするから矛盾が生じる。

まあ、まさに人生至る所に青山あり、難所ありといったところか。

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