HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

蟹の甲羅と日本的組織の限界、そしてタンポポの綿毛

自分の課題である「次代のリーダー育成」について考えている。宮崎駿のいないジブリはリストラをせざるを得なくなり、スティーブ・ジョブズのいないアップル社は革新的な製品を生み出せなくなった。いずれも、力を尽くして組織をけん引するリーダーを育成しようとしてきたにもかかわらずできなかった。なぜか?

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当然、ジブリにもアップルにも優れた資質とリーダーシップを持つ人間はごまんといただろう。しかし、組織そのものの改変、イノベーションを可能とする力の源泉ーーー権力としても、カリスマとしてもーーーを持つリーダーはなかなかいない、できない。この矛盾をして「蟹は自分の甲羅に似せて巣穴を掘る」と言う。

と、ここまでは昨日も書いた。では、現代の人財と組織はどうなっているのか?、ここからどうすべきなのか?この問いへの大きなヒントを永井俊哉氏が書いてくださっている。

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永井俊哉氏は、日本型の生産システム、日本型フォーディズムを「擦り合わせ型アーキテクチャ」と喝破する。「擦り合わせ型アーキテクチャ」とは、エンジンはもちろんビス一本まで新型モデルのために開発しなおす乗用車メーカーの姿勢などを指す。電機メーカーの方からまさに「擦り合わせ型技術が日本の企業の得意技」だと断言するのを聞いたことがある。しかし、最新の技術による最高の品質の、細部まで標準化された部品が、市場に行き渡るようになった現在、「擦り合わせ型アーキテクチャ」は競争力を失ってきていると永井俊哉氏は指摘する。そして、最近のネット関係、IoT関係の商品を例に出すまでもなく「オープン・組み合わせ型」の商品開発が台頭している。それでも、日本の企業は「擦り合わせ型アーキテクチャ」にこだわり続けるため、本来学力が高くポテンシャルがあるはずの日本人労働者、ビジネスマンは働く意欲を失っているため、生産性が低下し、日本の企業が競争力を失っていると。

まさに先人の掘った「蟹の甲羅」に合わせた「巣穴」に自分と未来のビジネスを無理矢理当てはめようとして四苦八苦している日本の労働者、ビジネスマンの悲惨な姿が想像される。それなら、自分の甲羅に合わせた巣穴を探せと。

私は、擦り合わせ型アーキテクチャを全面的に否定するつもりはないが、すべての企業が擦り合わせ型アーキテクチャを採用するという前提で解雇規制を行い、日本的経営を強制するということはするべきではないと考える。そこで、解雇を基本的に自由化し、解雇が国際的に見て禁止されている限定的な場合だけを法律で禁止するネガティブ・リスト方式を提案したい。

日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか | 永井俊哉ドットコム

この指摘はとても大事だ。タンポポが自分のタネを遠くまで飛ばしてでも、育つための適地を探すように、無理に自分を「擦り合わせ」るよりも自分に合った場所を探す方が容易だ。逆に、組織側からすれば現在の「巣穴」にあった「甲羅」の持ち主を探して「オープン・組み合わせ型」組織を作る方が柔軟である。人財の側からも、組織の側からも無理矢理「擦り合わせ」る苦労をしなくてよい。「甲羅」と「巣穴」を無理矢理「擦り合わせる」無駄な努力はなくなる。

とにもかくにも、あるべきは「時間を忘れて熱中できる事」を自分の仕事とすることなのだ。こだわるべきは、自分の力、個性という「甲羅」でも、組織という「巣穴」でもなく、寝食を忘れるほど夢中になって仕事をしているか?だけだ。ここを実現することだけに集中すべきだ。

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たまたま読んでいる山田無文師の「般若心経」にこうある。

私どもの身体が自分の意識に上らないということが一番健康なことであり、それが正しい生き方である。道を歩いておってもいちいち自分の身体を意識しておったら大変なことだ。仕事をしておってもいちいち自分の身体を意識しておったら仕事の能率は上がらん。仕事をしておる時には身体はあっても忘れておれるところに仕事ができていくのだ。身体は空に異ならず。空は色に異ならず。

般若心経

般若心経

組織は空に異ならず、空は自分に異ならず。ただただ、自分のなすべき仕事、同僚達が夢中になれる仕事の仕組みづくりに集中していきたい。