成田の街中でやたらポスターが貼ってあるので、気になって観に行った。市川海老蔵さんと團十郎さんの最初で最後の映画共演。「成田屋」を全力で応援するのは成田なら当たり前。見るまでそこに気づかない私は実に鈍であった。
映画「利休にたずねよ」×百段階段 特別企画展 開催 目黒雅叙園にて 2013年11月26日(火)~2014年1月13日(月・祝)|プレスリリース配信サービス【@Press:アットプレス】
この映画は、一杯の茶に命をかけた利休の姿を描いている。商家の道楽息子にすぎなかった利休をとぎすませたものはなんであったか?その死をも端然として受け止めた境地はいかにして磨かれたか?利休の茶の湯の美の世界とは?見事としかいいようがない描き方だった。
十代から七十の自刃にいたる利休の命がけの姿を演じきった海老蔵さんはすばらしい。パンフレットによれば、それぞれの年代で茶の点て方を変えているのだそうだ。所作一つ見ても、ひとつひとつが和の伝統の中で育った海老蔵さんだからこそ自然に演じられているのが伝わる。
また、利休を支え続けた後添えの宗恩のけなげさが胸を打つ。利休をこころから敬愛し支え続けていても、胸につかえた一事がずっと宗恩の言動を支配していたのだと、見終わってから改めて気づいた。なにより中谷美紀さんの役に入り込んだ姿に背筋がぞくっとするほど感動を覚えた。これまたパンフレットによればあるシーンの撮影では、「カット!」の声がかかっても中谷さんの涙が止まらなかったそうだ。
映画を彩るホンモノたち | 映画『利休にたずねよ』公式サイト
海老蔵さん、中谷さんの美しさを更に引き立たせているのが、本物の茶器や、茶室だ。千家の全面的な協力があったからこそここまでできたのだろう。美しいものは美しい。無駄なものをすべてそぎおとした美しさが日本にあることを教えてくれてこの映画に無条件で拍手を贈りたい。