マルコム・グラッドウェルの「第1感」を読了した。「単純な脳」をいかにうまくつかって「複雑な私」を作るか、「殺人ザル」としての顔がどのような場面で出てくるか、見事に描いていた。
- 作者: マルコム・グラッドウェル,沢田博,阿部尚美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
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少し前にイギリス人のバーテンダーとアメリカ人のパイロット(自称)の友達と話しをしていた。街の若干の治安上の問題が話題になっていた時だった。街をよくするのに、夜間の違法駐車を徹底して取り締まることが大切だという議論でもりあがった。自然、「割れ窓理論」へとつながり、マルコム・グラッドウェルへつながった。その時にイギリス人に勧められたのが本書だ。読むと約束したので読んだ。よい本は国を超えて読み継がれる。
前著「ティッピング・ポイント」も軽く読める内容でありながら深いヒントに私たちを導く。私の場合、べき乗則への興味はこの本から始まったと言える。その意味では、順番が逆だったかもしれない。本書を読んでから「殺人ザル」や、「単純な脳、複雑な私」あるいは「銃・病原菌・鉄」、「繁栄」へと読み進むべきであったかもしれない。
人の認識の能力は、瞬間の間に試される。現在、ウクライナで進行中の「事態」もそうかもしれない。片方で高度に知的で、お互いに信頼し、協力しあう力を持ちながら、非常なストレスや数秒という短時間で判断をもとめられる場合に、「殺人ザル」の地が出てしまうのが人間なのだ。悲しい現実だが、軽妙な語り口でマルコム・グラッドウェルは見事にこの現実を語って見せてくれている。また、この「第1感」が自分の意思と行動の積み重ねで訓練可能であることも語ってくれる。
ちなみに、本書で扱われたケンナというシンガーの動画を見つけた。なかなか気に入ってしまった。