開発経済学や、貧困からの脱出を考える経済学がいまさらランダム化指向などといっているのを読むと笑ってしまう。
- 作者: アビジット・V・バナジー,エスター・デュフロ,山形浩生
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2012/04/03
- メディア: 単行本
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科学ではないといわれる心理学だが、あくまで実験で実験群の比較をするドグマで実効性のある結論をひきだそうと努力をかさねている。ある意味、個体の行動と集団の行動を対象とする意味では経済学と心理学は似ている。
このレベルのことですら、経済学としてのドグマや、イデオロギーが邪魔をして、ものごとの本質を見つめられていないのなら、もっと規模の大きな経済学や、先進国の成熟市場を扱う経済学はどれだけ役に立たないのだろうか?
まがりなりにも、統計学を柱とする心理学の研究法を学んだものであれば、ランダム化志向、社会実験により定見を引き出すという姿勢はあまりに当たり前のものだ。その謙虚さすら経済学者は持っていないのだろうか?
これでやっと心理学の勉強ができるという状況になったわけですが,心理学というのは,素人の私が考えていたような,人の心のことを,頭の中でああでもない,こうでもないと考えるだけのものではなく,人の心理や行動の原理といったものを,実験や調査のデータに基づいて明らかにしていく学問です。
(略)
あらためて考えてみると,心理統計学というのは,高校時代から漠然と考えていた「文系と理系にまたがる領域」であり,また,最初に選んだ「経営工学」の領域の研究者とも,現在,統計学のつながりで交流があり,自分にとっては,落ち着くべきところに落ち着いたという感じがしています。
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ともあれ、本書の提示する貧困問題へのアプローチはとても重要。さすがの山形浩生訳でも、雰囲気は想い。クルーグマンの著作の翻訳の時のような軽快さはない。読むのには苦労しそうだが、すこしずつ読み進める。
「経済学者≒ソフィスト」と冷やかに観察しているが、本書は例外。
なぜなら、後知恵の机上論を分かりよいストーリーに押し込んで一丁あがりにしないから。あらゆる問題を一般原理に還元し、紋切型に落とし込む発想を拒絶するから。解決策はランダム化対照試行(RCT:random control test)によって検証済のものだから。
「貧乏人の経済学」はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
Dainさんの書評が道しるべとなってくれるだろう。