HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

認識台湾

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台湾を知る―台湾国民中学歴史教科書

台湾を知る―台湾国民中学歴史教科書

謙虚で現実的な歴史認識をされている。

第二は日本の統治政策について。「台湾人に対する不平等待遇」「警察政治」「皇民化運動」といった当時の政治の実相を、的確にポイントを押さえて淡々と書き綴っている。例えば「警察政治」についてだが、「人を畏怖させる権威で生活に関与した」との、当時からの一般的イメージに触れる一方で、その職権として「公共秩序を維持」を挙げるなど、「功罪」ともに認める姿勢が見られる。日本の「功」の面を被い隠しては、正しい歴史がみえてこないことを、良識的な研究者はかつての反日教育を通じてよく知っている。

(中略)

さて、ここで特に取り上げたいのが、「社会の変遷」の節目である。中でも、「時間厳守の観念の養成」「遵法精神の確立」「近代衛生観念の確立」という項目を設け、それらに関する諸施策と成果を大きく紹介していることだ。これはまぎれもない好意的な日本評価であって、まさしく本書が「植民地美化」と言われる所以でもあろう。
しかしここで思い出されるのは、この3つの「徳目」こそ、実は戦後の台湾で、支配階級だった大陸出身者に対する、台湾人の近代文明人としての、言わば最低限の証であり、密かな優越感をもたらすものだったことだ。

台湾に私と同い年の友人がいる。もう十数年のつきあいだ。彼に「君は元々の台湾の出だよね?」と聞いたら誇りにあふれた顔で「そう本省人だ。客家でもない」と答えた。私のようなものには、うかがい難い誇りを持っているのだろう。