地震はべき分布する。前回同じような内容のエントリーをあがた。その時には手元に底本である「歴史はべき乗則で動く」がないまま議論してしまった。改めて勉強しなおしてみて、確信は深まった。
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: マーク・ブキャナン,Mark Buchanan,水谷淳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/08/25
- メディア: 文庫
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まずは図表から。
これは、地震調査研究推進本部という文部科学大臣を本部長とする政府機関が出している報告書から取った。
このグラフと下のグラフは本質的に同じことを示している。
地震調査研究推進本部のグラフでも、「べき乗則」本のグラフも、Y軸は対数表示。X軸もマグニチュードなので対数。両対数グラフでほぼ直線にならぶということは、べき分布している可能性が高い。べき分布しているということは、線形な予測は期待できない。周期性がほんとうにあるのか、誰もなにも言えないということだ。
たとえば、T.RIKITAKEさんという地震研究者の言葉は何年の発言だろうか?
日本の多くの地震学者、地震対策の技術者、国や地方自治体の防災担当者は今や、近い将来、東京から名古屋までの中部日本の東海地方を、マグニチュード8程度の大地震が襲うものと確信している。
本書によれば1979年の地震予測に関する学術論文からだそうだ。その論拠は地震の周期性であった。実際には地震は必ずしも周期的に起こらない。ちなみに管首相が浜岡原発の停止を決めた論拠もこの地震の周期性のみに根拠をおいている。
周期性を期待できないのに、いつからいつまでの累積した確率が100%になると誰が言えるだろうか?T.RIKITAKE氏も30年前に87%以上の確率で「確信」していたのだろうが、実際には地震は起こっていない。
同様の主張がこの論文でもなされている。
周期性を否定した場合、どのようなメカニズムで地震は発生すると考えたらよいのか?信じられないだろうが、地震と以下の図のメカニズムは頻度と強度の予測において等価だ。
大きな木製の床と、その上にあって、コンベアのように絶えず右向きに動いている同じ大きさの天井を思い浮かべてみよう。天井には柔軟な細長い棒がいくつかぶら下がっていて、その先は床の上におかれた木製ブロックに取り付けられている。(中略)ブロック同士が、何本かのばねによってつながれているのだ。これがなければ、ブロックはそれぞれ無関係にうごき、単純に密着とすべりをくりかえすだけである。
これだけだ。この装置でいくつのブロックが動いたかが地震の強度を見事にシミュレーションするのだという。このブロックの実験の本質は自己組織化臨界現象だ。砂山の砂の崩れ方が代表的な例だ。
この考え方は決して地震の強度と頻度を「予測」はしないが、地震の強度/頻度分布をよくシミュレーションできる。
ひとことでいえば、管首相の決断には全く学術的な根拠はない。根拠のない決断によって数万人、数十万人が職を失うかもしれないということは、私には全く理不尽にしか想えない。まして、津波が来る以前から福島の燃料棒が崩壊していたことが確認された現在、浜岡原発を停止させてもなんの意味もない。燃料棒をすべてぬきとり、国外にでも持ち出してしまえというのなら、まだ話しはわかる。だが、現実は停止させただけだ。
早く管首相は退陣したほうがいい。