マーク・ブキャナンの本が届いた。

人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動
- 作者: マークブキャナン,Mark Buchanan,阪本芳久
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 2009/06
- メディア: 単行本
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あまりに科学書っぽくてタイトルが内容を表していないのでは?原題の「The Social Atom: Why the Rich Get Richer, Cheaters Get Caught, and Your Neighbor Usually Looks Like You」(社会的アトム : なぜ金持ちはますます金持ちになり、ずるいやつはつかまり、あなたの隣人はあなたに似ているか?)の方が刺激的だし内容がわかりやすい。本書は、人を個別個別の存在でみるのはなく臨界状況にある砂山に落ちる砂なのだととらえた方が、「いつ」という問いには答えられなくとも内在するべき乗則的リスクを予測することはできるという観点を提供している。「歴史はべき乗則で動く」の作者としては当然の帰結だ。
このマーク・ブキャナンの問題意識に立った方が、ここのところいくつか未解決でいたブクマでのコメントなどのへのお答えができそうな気がする。
id:nekoluna スケーリング則くらい理系にとっては一般教養の範囲で事例なんて山のようだけど このヒトはそれを神秘的な何かと思ってるのか。 単に原因と結果を混同してるだけか。
はてなブックマーク - 保護と自由とべき乗則 - HPO:機密日誌
確かに私は微積分以上が理解できない文系野郎だ。ただ、まさにスケーリング則だの、べき分布だの理系な方にとって当り前のことが、現状では政治家や、官僚や、法曹界の方々には当たり前でないことが問題なのだと私は思っている。相転移あるいは自己組織化臨界現象といわれる状況下においては、こまかいパラメーターよりも、なにが本質であるかがその結果のほとんどを説明できる。ばねと糸でできた思考実験が地震の頻度と強度を正確にシミュレーションする。あるいは、適応度地形の山と山との間の距離を線分だけでしめした進化モデルが化石から知られる種の数と持続を説明できる。
まして、人の世において、法律を制定したり、世間一般に介入する行政処分を行う時に、その本質を見つけたシミュレーションを組むことができれば、その立案するうえで、どのようなサイドエフェクトが発生するのか、政策にともなうべき乗則的リスクを考慮することができるのではないだろうか?イギリスで実際に怒ったように、ウサギの繁殖を制御しようとして、固有種であった青い蝶を絶滅させてしまっては手遅れなのだ。
id:kmaebashi じゃあ、人類史上最大の戦争であった第二次世界大戦の前にはさぞや長期間平和が続いたんでしょうね。
はてなブックマーク - 米人はべき乗則に気づいて山火事を消すのをやめた - HPO機密日誌
これは「歴史はべき乗則で動く」のまさにモチーフの第一次世界大戦が始まった一発の銃弾の話であり、「ブラックスワン」を書いたタレブの故郷を破壊しつくした話だ。第一次世界大戦の前100年は平穏であった。タレブの故郷のレバノンは、内戦が始まるまでは1000年の平和を享受していた。
id:ita 科学 山火事は二次元パーコレーションという統計モデルでよく記述できる稀有な例。他にはアメリカの停電もrandom huse modelで記述でき規模がべき分布。しかし小規模な停電で大規模なのが防げる訳ではない。
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itaさんなんて私の想像できる科学知識のはてを突破されている方なので、コメントするのも控えられる。ただ、小規模が停電が起これば、電力供給会社はこまかい改善を行うのではないだろうか?レバノンがそうであったように、長い長い平和は、どこかシステマチックなリスクを抱えているように思える。世代交代というのも同様で、親が成功者であればあるほど、子どものできが悪いというケースが多い。親が成功している面しか見せなければ、自然子どもはスポイルされてしまう。他方、親が苦労に苦労を重ねていれば子どもはそれなりの経験値を積むもの。「創業と守成といずれが難いか?」という話だ。

- 作者: 山本七平
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2001/03
- メディア: 文庫
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とりあえずタイムアップ。また、筆を入れたい。