かなり衝撃的だった。ピアジェの構成主義が見事に実験により論破されている。
- 作者: スタニスラスドゥアンヌ,Stanislas Dehaene,長谷川眞理子,小林哲生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/07
- メディア: 単行本
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ピアジェは、ものの保存の概念が生じるのは2歳以降だとしていた。
前操作期(2〜7歳)
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(中略)
保存性は、対象の形を変化させても、対象の質や量といった性質は変化しないという概念。保存課題とは、前操作期の子どもに2つの容器に同じ量の液体が入っていることを確認させた後、1つの容器の液体を底面積が小さく背の高い容器に移し替え、どちらの液体の量が多いか尋ねると、背の高い容器を選択する。これは、見かけに惑わされているということで、保存性を認識していない。
本書では、一才未満の新生児の注視時間をはかることによって、すでに保存則を身につけていることを示す心理学実験を多く紹介している。そして、保存の概念の先にある数の概念すらあることを示している。
これは、「重要なことだ。ピアジェは、生まれてから後天的に、体を動かすこと、試行錯誤を重ねることで保存則を身につけ、数の概念が生じるとしていた。新生児でも数の概念を持っているということは、先天的に「数覚」がそなわっていることを示す。
この章を読む前までは、私はこう考えていた。
人の認識構造って基本動くものや、ひとつのものを個別のものして認識するようにできていると思う。そのものそのものを概念としてとらえ、すべての個性を捨象して「ひとつ」としてしまうのは、脳の構造の一番いいところを捨てているようなものだと私は思っている。
2010-10-25 - HPO:機密日誌
ピアジェを教科書で学び、自明だと思っていた私は根本的に間違っていた。
ドゥアンヌはこう書いている。
進化論的な観点から考えてとくに注目すべきことは、自然というものが、もっとも基本的な物理法則を土台にして算術の基礎を作りあげたということである。人間の「数覚」には、少なくとも三つの方法が利用されている。一つめは、一つしかない物体は、複数の場所を同時に占有することはできないということ。二つ目は、二つの物体は、同じ位置を占有することはできないということ。三つ目は、物体は突然消えたり、何もなかった場所に突然現れたりできないということである。
ドゥアンヌは、いくつかの心理学的実験により、この3つの物理法則を新生児がすでに備えていることを示している。もっといえば、ものがメタモルフォーゼすることすら新生児は受け入れられるらしい。ひとつ「ひとつのものを個別のものして認識する」のが基本だなんて、私はすっかり間違えていたようだ。