HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

感覚はべき分布するのだった

大学でならった感覚知覚心理学の大原則を忘れていた。

・スティーヴンスの法則 Stevens' law(べき法則)
「感覚量は刺激強度のべき乗に比例する」

感覚の測定

物理的な刺激の強さと、ヒトが受け止める感覚の強さは単純比例しない。スティーヴンスの法則の測定法は、マグニチュード測定法といわれる。地震をはかるマグニチュードと同じだ。10倍になってやっと尺度がひとつあがるという単位のはかり方だ。

つまりは、いままで受けきた刺激から「あれ、変わったかな?」と感じるためには、10倍という強さでないと話にならないということだ。ヒトは感覚の根本から、桁の違う刺激を受けないと、「お、いままでとは違う!」と受け止めてもらえないようにできているということだ。

これは長期に渡る人間関係でも同じだろう。日常でパートナーにいままでと同じ愛や、喜びや、感謝という刺激を与えているつもりでも、ヒトはすぐに刺激になれてしまい、違いに弁別できなくなってしまう。与える愛や、喜びや、感謝が量で測れるとすれば、その桁が10倍、100倍と増えてないと、「ああ、私は愛されているのだ」と感じられなくなる。

いや、そんな日常生活で桁を変えるほどの努力なんてできない。従前の刺激がまったくクリアされるまで時間間隔を置くか、相手を喜ばすことをあきらめるしかない。あ、そうそう、別の感覚尺度に訴えるという方法があるかもしれない。耳で与えた次は、目で。目での刺激のつぎは、触角で。触角の次は味で...

人間とはほんとうにうまくできている。

「長生き」が地球を滅ぼす ― 現代人の時間とエネルギー ―

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