HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「お金が得難いのはお金が多すぎるから」

ハイエクの「法の支配」、オールドウィングの思想も、タレブブラックスワンも、本居宣長が200年前に説いている。「玉くしげ」だ。

「玉くしげ」を読みながら、これは要旨をまとめなければとはりきっていた。

玉くしげ - 美しい国のための提言(現代語訳 本居宣長選集 第1巻)

玉くしげ - 美しい国のための提言(現代語訳 本居宣長選集 第1巻)

ところが、現代語訳された方の方のページへ行ってみたら、なんとYouTubeに紹介が載っているという。見てみたら、私が生半なことを書くよりもポイントがまとまっていた。


*1

それでも、お金のところは大切なので、ちょっとだけぬきがき。

そもそもこの金銀というものは、最上の宝でありながら、実は飲食の代わりにもならず、衣服の代わりにもならず、全然何の役にも立たないものである。(中略)ところがこの金銀の流通が始まってみると、きわめて世の中で便利であって、とりわけ自由度が高いのである。そして、用いられる金銀はなるべく流通量が多いほど便利で自由なのだけれど、それに付随して一方で弊害も多く、却って世の中の困窮の原因にもなるのである。

Amazon.co.jp: 玉くしげ - 美しい国のための提言(現代語訳 本居宣長選集 第1巻): 本居宣長, 山口志義夫: 本

貨幣の流通高をあげることで景気を回復できると信じている人はこの本居宣長の言葉に耳を澄ませてほしい。

お金が増えれば、増えるほど、べき分布の係数は急になる。お金のネットワークの力はすばらしい。お金はすべの商品、すべての国、すべての会社、すべての人をひとつの価値観でつなぐ。お金は世界をフラット化し、高い高い山や、深い深い海をも超えてしまうから。お金は、すでに事実上世界をひとつにしてしまった。複雑ネットワーク理論によれば、ネットワークに参加するノードの数が増加すると、ネットワークは複雑化し、ハブが生まれる。ノードの数とエッジ(リンク)の数が増えれば、増えるほどハブも巨大化する。お金のネットワークが複雑化すればするほど、ブラックスワンがはばたきやすくなるといってもいい。結果、お金を増やしすぎたから、金融危機から(日本の政策転換が進まなかったがために)恐慌状態を招いてしまった。本居宣長が言った通りではないか?

しかし、本居宣長を読んで、世界経済がどうなろうと日本は日本の道を歩めるのだなと確信した。たぶん、多くの方は「玉くしげ」を読んで具体的な政策提言に乏しいと感じるだろう。しかし、それはその方の感覚の方が間違っているといいたい。この本が、開発主義、進歩主義、理性主義とは程遠いところから書かれていることを知るべきだ。ハイエクが言う理性への過信の危険さを、本居宣長はよく知っていた。「法の支配」について明確に述べている。

いま、私たちが世界の在り方として当たり前だと思っている姿は、長い長い人の歴史の中では異常な状態なのだ。本来、農業生産も成長せず、コミュニケーションもごくごく近隣に限られ、人力プラスアルファ程度のロジスティックスの世界が当たり前なのだ。軌道エレベーターによって、無限のエネルギーを得て、宇宙の彼方の新たなフロンティアに飛び立っていけるようになるまでは、開発主義は終わったままだ。成長がない世界で、どのように生きるべきかを私たちは模索すべきであり、「玉くしげ」こその開発主義の終わった後の世界の道しるべとなるだろう。

まだまだ書きたいことはいっぱいあるのだが、いったんここまでとする。

■おまけ

そうそう、「直毘霊」のYouTubeの解説もあったんだっけ。

■あちゃー

Danさんが書評されているを見落としてた!

■これすごい

*1:しかし、このすんごいすんごいよいBGMは誰の曲?