HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

ニッポンの生産性

池田信夫先生の動学マクロの話はわかりやすかった。

(1+r)(1+μ)c1=(1+g)a1

となる。ここで均衡を成立させるr*が自然利子率である。gが上がると(他の条件を一定とすれば)r*も上がるので、インフレを防ぐために利上げが必要だ。他方、gは技術的に与えられたパラメータなので、rによって変えることはできない。金利を引き上げると、マークアップμが下がり、デフレになる。

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(強調はHPO)

生産性については、前に興味を持って考えていた。ちょっとぐぐったら、出てきた。ちょっと余談だが引用する。

クルーグマンも同じことを考えていて、インベストメントバンカーなんて仕事こそ今後どんどんコンピューター化されて消えてたっていい、と言っている。

生産性とはなにか? let me hear your body talk: HPO:個人的な意見 ココログ版

原典の”The Age of Diminished Expectations”はなんと97年の出版だ。そっか、今回「投資銀行」というビジネス分野が消えたのはもう10年前から賢い人たちの間では分かっていたことなのだね。

The Age of Diminished Expectations

The Age of Diminished Expectations

もひとつ余談をしてしまえば、動学マクロの形ってあらためてロジスティック式に近いなと。
\frac{dN}{dt} = r (K - N) N 

ここで、rは人口の増加率、Kは一定の環境下における人口の限界、Nは各世代の人口。上の式でいえば、左項がKかな?成長率(1+g)がロジスティック式のrに相当。各世代の労働生産性aiがNに。うん、NとKは反対かもしれない。

ま、それでも式の形としては似ていると素人目には映る。だから昔、建築構造の動的解析と似ているなと思ったのだなと改めて感心。

[書評]自己組織化の経済学 その2 ~動学マクロから履歴減衰~ Hamiltonian to Economics: HPO:個人的な意見 ココログ版

んで、問題は生産性。いろいろ言われているし今回製造業がおっこっているけど、生産労働人口が減っている中では順調に労働生産性があがっているといってもよんじゃないかと。

だから、実質ベースではOECD最低であっても名目ベースとかだと今回みたいな円高の環境下ではかなり上位になる。下のレポートの最後の方の名目労働生産性の表をみるとよくわかる。

ここでほんとうにわからなのは、購買力平価にした場合はOECDで最低クラスになってしまうということは、日常的な物品は国内で十分「高く」取引されているということだと私は思う。「高い」値段で売れるということは、池田先生の式でいえば、企業のマークアップ(利益率)が十分に高いということを示すはずだ。どうもここがわからない。

そもそも労働生産性ってなにと思うのだが、これだという定義にあたらない。

サービス業の時間あたりの生産性は2500円あまりだそうで、あまり低い感じがしない。

年間の労働時間も、先進国ではまあ標準なのだろう。

サービス業の人は年間1741時間しか働いていないということにショック。一日8時間労働換算だと年間218日、365で割ると6割。一週間でいえば、ほぼ4日働いて3日休んでいることになる。製造業の方々は年間1987.6時間も働いている。もしかするとサービス業と製造業の年間労働生産性の差は労働時間の差にすぎないのかもしれない。

ということで、非常に短絡的にいえばこれからますます生産労働人口は減っていくわけで動学マクロの式を素人なりに解釈すれば長時間働いてでも一人当たりの労働生産性を上げるほかないと。金融政策では短期的なサポートにしかならない。あるいは、やはり政策を大幅に変えて技術革新、マーケティングの革命がおこりやすい環境を作るしかない。ブラックスワンではないが、なんどもなんども飛び立とうとすること以外に新しい産業が生まれることはない。失敗する自由こそが必要なのだ。*2

*1:ちょっとね、思ったのはサービス業で時間あたりの生産性が低い業種のワースト1、2は「遊興飲食店」、「洗濯・理容・美容・浴場業」だった。知っている人は知っているけど、こういう業種って申告所得をものすごく低くしてるんだよね。実は日本は先進国の中でアングラ経済が結構な比重を占める国なのかもしれない。サービス業の生産性が低いというのは統計の間違いかもしれない。

*2:んで、また余計なことを書いてしまうと、労働時間が長いのが罪悪だと、世界的に日本は長時間労働しすぎなのだと言ってきたのはお役人たち。それを短縮しておいて、サービス業の生産性が低くて国の足を引っ張っているみたいな言い方をされる。やはり、ここにも官製不況があるといいたくなってしまうのは私だけだろうか。労働市場労働環境についてもっと自由にすることが生産性をあげると言い換えてもいい。