イーガンの論理空間の限界の話しはいくらなんでもリアルとの接点が見出だせないので、経済の動きをS字カーブから考えられないかという3年来の宿題の話し。
[書評]自己組織化の経済学 その1 ~ 断続平衡 ~ S Curve: HPO:個人的な意見 ココログ版
正直、安冨歩先生のご著書とr-k戦略の話から思考が始まったのだが、ちょうどココログを書くのをやめたときの思考と重なる。3年もたっているのに、ひとつも進歩していないということが少々悲しい。まあ、3年たっていろいろあったけど同じ人間のままでいる証明だとマッチョにとらえておこう。
真面目に目先のインフレについて考えて来た。インフレとは貨幣の価値が全面的に下がり、不動産や商品の価格があがることなのだと経済学的には理解してきた。しかし、実際に自分の現場でみると勝手が違う。
これをロジスティック式をエクセル化したグラフで書くとこうなる。
エクセルファイル : http://hidekih.cocolog-nifty.com/Move_Data/chaos-sim080418.xls
*1
売り上げと仕入れのタイミングを考えると、さらに売り上げとコストはずれが生じる。これは斜めの線をグラフに書き入れるとわかるかもしれない。
わかりにくいのでポイントを拡大する。
これは価格を先に決めて、製造に入るいわば請負型のビジネスの場合の売上と仕入のタイミング差を示している。同時に、ということは垂直に、売上と仕入が行われるのではないために、インフレの影響がより増大するイメージがわかるのではないだろうか?
通常売り上げはコストの上昇よりも先行するのは難しい。特に現代のように選択の束が無数に存在する場合は、同じ商品間の競争だけではなく、代替の消費のとの競争もある。古典的なところでは、コンビニがパパ・ママショップを駆逐した後、ファーストフードと「中食」競争を始めたりしたケースがそれだ。
売り上げと仕入れのタイミングは業種によって異なるのだが、逆に言えば、業種によってはデフレの時代に利幅が稼げる可能性が高い職種もある。そういう職種は、いまのインフレだとつらい思いをすることになる。
かつ、「競争戦略」というタイトルの辞書のような本を読むまでもなく、市場が独占・寡占的か、限界競争状況かでもまったくインフレ、デフレの持つインパクトは異なるだろう。
ここまでは、ごく常識的な線。では、これはどうだろうか?
さっきのグラフの「コスト」に相当する系列の係数、rを0.5から3.1に変えただけだ。そして、現在起こっているグローバル市場とローカルな市場が連結した経済で起こっていることではないだろうか?*2
ちょうどよく「複素経済」の話を弾さんがされていた。
これこそが、「複素経済学」の全体図である。上の円が虚部、下の円が実部。上では資金が、下では資源が循環している。上をeconomy、下をecologyと言い換えてもいいだろう。
(中略)
今やお金の大部分が、上の円に属するからだ。上の円は「虚部」。人間の共同幻想が生み出しているからだ。もう少し正確に言うと、ブレトン・ウッズ体制が崩壊、貨幣が「無本位制」になったときに「虚」となったと言える。
404 Blog Not Found:経済の「複素」像 - 書評 - 「お金」崩壊
■追記
「巨大な量の貨幣が行先を失って不安定な動きをしていることがさまざまな問題を起こしている」という意味でうけとらせていただいた。
ただ、現実にリアル世間とかネットを眺めていると、格差だ貧困が問題だというわりには、奇妙なところに大きなカネが流れては問題を起こしている(そんな投資話はないだろ常考的な)のを見ていると、カネをどう使っていいかわからないという部分もあるし、偉そうな言い方だけど日本の経済の問題はある意味でカネを溜め込んでいることが諸悪の原因とも言えるわけで、マイナス金利しろよ的な意見のほうに私は傾いている。
[書評]デフレは終わらない 騙されないための裏読み経済学(上野泰也): 極東ブログ
なんていうかまさに経済は生き物、ケダモノなのだと思えてくる。
*1: という式をよく理解しなおして、エクセルファイルをつくりなおしたら、ちょうどコストと単価の関係を表現できた。Bravo!
*2:「えっ、そんなばかな!」という方はおとといのエントリーをぜひ読んでいただきたい。例の鼠と象とCODの話だ。http://d.hatena.ne.jp/hihi01/20080414/1208180241