アクティビティー・ベースド・コスティング(activity based costing、ABC)は、デフレに強いという話を聞いた。
製造業では、通常最初に売値を決めて、仕入れをし、製造を始める。が、売買契約は出荷してからしか決まらない。店頭売りも契約のひとつにすぎない。製造から契約までに価格変動があるため、この間の時間をどう縮めるかが勝負なのだ。FIFOにしろ、LIFOにしろ総コストが決まらないと、その日、その月の儲けはわからない。1週間後、1月後でないとわからない。
これに対して時間あたり付加価値が明確になっているABCでは、その日に投入した原材料に、総労働時間と時間当たり付加価値の積をたしあげるだけで、その会社が一日どれけの稼ぎをしたかがわかる。
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他方で、常に生産性は向上しつづけてきたため、効率よくものを作れば作るほど市場でのデフレーションは深刻化していく。これは「フリー」にあるとおりだ。
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デフレがどれだけ怖いかについて以前考えた。
逆にいえば、デフレ下では、製造業と逆に最初に売値を決めて契約してから、仕入れ、製作にかかる請負型の産業の方が対応を取りやすいともいえる。これがバブル後の不況でも請負型企業が生き残れた理由だ。
経済学には時間の概念がないが、経営は時間との勝負だ。
*1:ちなみに、この図はインフレを想定した図。デフレでは逆になる。