HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

言語の分化はフリーライダー対策だった

実におもしろかった。

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

諸事情でPCを使えない環境なので詳細は後ほど。人の言語と行動のほとんどは「毛づくろいとゴシップ」で説明できてしまいそうな勢い。

群の数と新皮質の割合が比例することも私には発見だったが、群の共有資源、コモンズをただどりしてしまうフリーライダーを排除するには、まねされやすい身体的みぶりよりもその群独自の言葉遣いによる排除が有効なのだと。

イーガンの「ディアスポラ」を読んだ時から、文明が長期に安定するとコミュニケーション、つーかゴシップ、噂話しかなくなることは納得できると思っていた。

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)


■文字通りの追記
ということで、半年ぶりくらいに加筆。

ヒトがサルとの共通の先祖から分化した時点から、フリーライダーが脅威だった。

ヒトは群れで生きるハチやアリと同様の宿命を最初から持っていた。その弱さのために一人あるいはつがいでは生きて行けず、遺伝子を伝えていくのに、群れとして生きていくしかなかった。群れをまもるために、狩りや外敵から守るために自分を犠牲にせざるを得なくなっても、自分の子か、自分の兄弟の子は残る。

自分を犠牲にしてまで守った自分の群れのメスが、ほかの群れから紛れ込んだオスに取られてしまったり、子を皆殺しにされてしまうのでは、群れを守るために死を辞さないオスは報われない。群れでしか生きて行けず、群れのために死ぬことも群れの維持のために必要とされる...それでも、メスには浮気される...いやぁ、オスは昔から本当に報われないなぁ...という話は後にして、ではどうしたらよいか?

メスにしたって脳が発達して、そのオスが外見や身振りだけでは区別できないのでは、いつDV状態になり子殺しをされるかわからないのではたまったものではない。略奪婚は昔からメスには迷惑な話だ。

そこでできたのが、「言葉」だという。ヒトは外見が似ているために、サルとの共通の先祖のころのような群れの区別の仕方ができなくなった。「言葉」は必要以上に早い速度で分化しているのだという。たかだか1000年、2000年でお互いにコミュニケーションがとれなくなるほど、言葉が分化してしまうのはヒトの能力からいえば無駄が多い。しかし、同じ群れかどうかを外見や身振りからだけでは区別できなくなってしまえば、ちょっとしてなわばりの差であっても、別の方言をしゃべり、お互いの群れの中だけで安定している方が、危険なよそ者を簡単に受け入れるよりも生存につながる。また、言葉がすこし違うくらいなら、数世代前には同じ群れであったことが証明できる。かくして、世界中に生存圏を広げる中で、なわばりをまもり、よそものを排除し、群れの結束をますます固めるために、言葉の分化は加速された。

バベルの塔の神話は真実なのだ。

今の世の中では、「法律言語」というのが新たな群れの境を示す言葉の分水嶺になっているように思える。