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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

運命の転換

先日、古市佳央さんの講演を聞いた。勇気を与えられる講演だった。全身の41%のやけどという重傷を負い、死を望むほどの絶望の縁に立たれた。何年もの間。まだ、高校生なのに。

昭和63年4月2日は僕にとって忘れられない一日となった。
4月3日には昨日までの自分は過去の自分になってしまった。
そう、バイク事故で全身大火傷を負い顔や手の形がまったく変わってしまったのだ。
全く悩みの無かった事故以前の自分が、一瞬のミスで事故に遭い、自殺を考えるほど悩み、泣いた・・・
誰か助けてほしい、僕の気持ちをわかってほしい・・・
そんな時同じ悩みをもった火傷患者と出会い、気持ちが変わっていった。
辛いのは自分だけじゃないんだ!それに気付いてからは少しずつ前向きになれた。
そして、多くの人に出逢い、仕事も出来るようになった。本気で笑えるようになっ た!
世の中には悩みから立ち直れない人がたくさんいることを知った今、
そんな人たちはどこの扉をノックすれば良いんだろうと思ったとき、
オープンハートの会があるよって言ってあげたい!

オープンハートの会 会長より一言

全身やけどというと思い出すのが、木村利人先生の生命倫理の著作を読んだ時に知った「プリーズ・レット・ミー・ダイ」という話し。

 1973年の7月、父親と2人で不動産会社を経営していたダックス・コワート (Dax Cowart) さんは、テキサス州ダラス郊外の土地調査のため車で家を出ました。目的地のすぐ近くで、どうしたことかエンジンの止まった車の始動スイッチを入れた瞬間に大爆発するという悲惨な事故にあいました。父親を失い、自らは大火傷を負い、体の主な機能がほとんど回復不能なことに病院で気づいた時、ダックスさんの発した言葉は 'Please let me die!' (お願いですから死なせてください) だったのです。

バイオエシックス 第2講. プリーズ・レット・ミー・ダイ

いのちを考える―バイオエシックスのすすめ

いのちを考える―バイオエシックスのすすめ

空軍出身でスポーツマン、経営者としても十分に経験を積んだこのダックスさんですら、「プリーズ・レット・ミー・ダイ」とやけどの治療中に叫んだと。この方の自己決定が尊重されるべきだとの信念は変わらず、この後、病院に対して訴訟まで起こしたと聞いた。まして、高校生だった古市さんが絶望の底の底に落ち込むのも無理はない。それでも、病院での経験、家族への思いから、自分が生きていること、そのことだけで人を不幸にしていない、幸せにしているんだとの気づきから、運命の大転換をされた。いや、ご本人は謙虚にたんたんと語られていて、「運命の大転換」なんていう大それた言葉は使っていらっしゃらなかった。

古市さんは、「準備を十分にした、大決断の末の行動というよりも、ほんのちょっとした思いつき、小さな行動の積み重ねによって人の生き方は変わる」とおっしゃっていた。50年生きてきて、私もこころからそう思っている。人生を左右すると思ってした苦渋の決断よりも、日々をどう生きるか、人とのかかわりに常に誠意をもって接するかとか、小さなことがいまの自分の人生につながっているように思う。

古市さんの勇気あるお話しを聞けて、勇気をもらえた。

実は、講演の最初に「自分が世界で最高に幸せだと思う人、手を上げてください」とおっしゃった。その質問に、たかだかと手を上げた私のお仲間がいた。後で聞いたら、この方は余命数ヶ月という宣告を受けているのだという。人は得てして、自分がいつか死ぬと分かっていても、その「いつ」がいつくるかわからないので一日いちにちの大切さが分からない。古市さんにとっても、このお仲間にとっても、今日の一日が本当に「宝物」なのだと。人生の後半生に入っている私は見習わなければならない生き方だ。