HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

ゴジラと福島

あまり3.11が近づく前に書いてしまおう。後付けの理屈かもしれないが、ゴジラは実に日本を象徴する映画キャラクターだ。先日雲仙に言って噴火の展示を見た。

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当時のエントリーにはあまりに生々しかったので書かなかったが、雲仙岳災害記念館で体験した溶岩ドーム、火砕流の様子がまさにゴジラそのものに見えた。

雲仙普賢岳溶岩ドーム

http://www.udmh.or.jp/web4/_src/pdf/7-12.pdf

www.udmh.or.jp

ゴジラが原爆実験によって誕生した、もしくは放射能のビームを吐くというのも、以前は広島、現在では福島第一原発の恐ろしさを象徴している。多くの方が指摘されているように、「シン・ゴジラ」という作品は東日本大震災があり、福島第一原発に対して政府がこういう風に対応してくれていたらという願望の物語でもある。

二時間の映画を再び見て、850円のパンフレットまで買って、やはり庵野さんはもう一度人々とこの国を信じたいという希望を込めてこの映画を撮ったのだと暫定的に結論づけている。結局、庵野監督はマキ教授その人であると。冒頭のあのタイミングでマキ教授が姿を消し、そのボートの直下から事態がはじまったことは偶然ではありえない。マキ教授こそが意図を込めて日本にゴジラを贈ったのだ。誤字たっぷりの本ブログだが、これは誤字ではない、「贈った」のだ。いわば、庵野監督が「シン・エヴァ」に至る絶望に満ちた「エヴァンゲリオン」を贈ったように、マキ教授は日本という国と人々に「この私の絶望についてこれるものななら、お前らついてこい」とゴジラを贈ったのだ。そこから、絶望の中の絶望の物語をつむぐこともできた庵野監督が日本の未来に対して希望を見いだそうと意図的に「現実」を構築したのが「シン・ゴジラ」なのだと。

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また、ゴジラは空襲、本土決戦という恐怖が残っている中で生まれたことも忘れてはならない。南太平洋の島々から恐怖が本土を、帝都を目指して上陸してくるという恐怖。ゴジラは本来陸生の形態であるのに常に海から上陸する。

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なにを言いたいわけでもない、なんの落ちがあるわけでもない。ただ、この「ゴジラと福島」というタイトルのエントリーの下書きは「2015/8/9 23:29:03」というタイムスタンプのまま書けずにいた。2017/2/23の今、落ち着いて書ける。この間にあったシン・ゴジラとすずさんの二つの作品の持つ浄化作用に感謝したい。