HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「グリーンブック」

アカデミー賞を受賞したという評判を聞いて見てきた。「助演」なのかと疑問に思ってしまうが、ピアニスト役のマハーシャラ・アリの演じる知的な黒人男性が素敵だった。

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受験生であった頃、英語の長文読解で黒人解放に関する文章を読んだ。60年台以降黒人の公民権回復運動により才能ある黒人の子供たちは十分な教育を受けた。そして、話す言葉、生活レベル、すべてにおいて一般のいわゆるアフロアメリカンとは異次元の存在になってしまった。「彼らはもはや黒人ではない」と書いてあったように記憶する。まさに、アリの演じた実在のピアニストはこうした存在の代表格であったのだろう。

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逆に「主演」のヴィーゴ・モンテンセン演じるナイトクラブの用心棒は、イタリア系アメリカ人で腕っぷしも強く、智慧もあるが一般的な教育は受けていない。「ホワイトプア」の層に近い。

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(以下、ネタバレを含む)

彼の"I am blacker than you."「俺はあんたより黒い」という台詞は現在のポリティカル・コレクトネスの米国社会ではぎりぎりの台詞であったのではないかと想像する。本当に印象的な台詞だ。

白人のドライバーに運転させているピアニストが南部、deep southの田舎の道で立ち往生した時、周りの農園で働く黒人達から奇異の目で見られるシーンがあったが、まさに「もはや黒人ではない」ことがよく表現されている。

最後の最後のシーンはこうした背景からすれば、本当に感動的だった。