昨日に続き、ユヴァル・ノア・ハラリのTED、TEDトークを見た。
「Homo Deus」はまだ本屋の立ち読みレベルなので、以下の私のハラリ氏の製造現場理解への懸念はすでに内容に含まれている可能性がある。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/09/05
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多少なりとも、製造の現場にかかわらせていただいているものとして、現代においてもAIや、データの流通を可能にする社会基盤、あるいはその入れ物そのものは圧倒的に人力で作られている。あるいは、その製造機械のメンテナンスは人力以外のなにものでもない。例えば、世界で最も最先端であるトヨタの製造ラインはよく止まることで有名だ。言及するまでもないほどのビジネスの名著、大野耐一氏の「トヨタ生産方式」によると、トヨタは「自働」という「にんべん」のつく「働」にこだわるのだという。製造ラインの人が「しまった!」、「ここがきちんとできていない」となるとたとえ期間工であっても目の前のひもを引いて製造ラインを止めることができるのだそうだ。実際にラインを見てきた人によると、見事なのはその後の対応。わらわらとどこからともなく十数人の人が集まってきて、目の前の仕掛りへの対応をする人、前後の製造計画を調整する人、問題の根本的な原因を追求し解決する人などあっというまにミーティングが行われ、対応がなされ、なにごともなかったがごとくラインが動き始めるのだという。私の知る限り、ほかの製造ラインでも、順調に作っている状況よりも製造の組み換え、金型の入れ替えなど、たぶん稼働していない時間の方が圧倒的に長い。
ということは、圧倒的なAIが実際に存在するようになったとして、ハラリ氏が主張するような"useless people"の存在をAIが許すわけがない。逆に、世界中のデータをすべて「アルゴリズム」で処理できるAIもしくは、「AI群+ひとにぎりのスーパー人類」が存在するようになったとしたら、すべての人類を活用した製造ラインなり、サービス提供に組み込むようになるだろう。なぜなら、私のような凡庸な人間が考えても、ひとにぎりのエリートと圧倒的に「あんたは無価値だ」といわれる層に分けたとしたらその社会は限りなく不安定になるからだ。
ここで議論すべきは、20世紀の社会主義社会が陥った社会的再計算問題だ。今の所、スーパーAI、スーパー人類が出ても、それらはお互いに予測しあえないので、21世紀の現在においても、原理的に「社会主義計算問題」の不可能性は有効だ。ここでもハラリ氏の真意をあとで調べたい。
想像しうる最高速の計算機があったら完全な社会体制は設計可能か?仮に「宇宙の究極の答えは42だ」と答えられる性能の計算機があったとしても、常に先はある。その計算機を利用して行動する人間がいる。最高速の計算機を利用する人間の行動は、最高速の計算機では予測不可能となる。その他、語るまでもない様々な相互作用とブラックスワン的不可知性により、完璧な社会制度は設計し得ない。
ファシズムとカール・シュミット - HPO機密日誌
ちなみに、SFの世界ではこうした問題はかなり分析されている。たとえば、すべての人々が「システム」により完全な職業に割り当てられる世界を描いた「プレーヤーピアノ」はとても有名だ。
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア
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これ以外に完璧に人が割り当てられた社会におけるピアニストに生まれついた男の話があったのだがタイトルが思い出せない。よくよく調べる。