「反脆弱性」、「GAFA」、「進化は万能」を読んでいてつくづくタレブ、ギャロウェイ、リドレーらの知的スタミナを感じる。
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/06/22
- メディア: 単行本
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- 作者: スコット・ギャロウェイ
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2018/07/27
- メディア: 単行本
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進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マットリドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之,吉田三知世
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/06/05
- メディア: 文庫
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比べるのもおこがましいが、本ブログは「べき乗則」との出会いによってここまで書き続けてきた。知的にも劣る、素人の私がなにも知的な資産に貢献できるわけはないが、べき乗則について多くの書籍で学び、自分自身の体験と結びつける作業が本ブログのひとつの側面であると私は考えている。それは、人類の寿命延長が必ずしも幸福につながらいという考察であり、人類における大虐殺が人が人の欲しがるものを欲しがるという当たり前の属性から生じるということであったりした。しかるに、タレブははるかに深く自身の出自、自身の人生における叡智とブラックスワン、確率分布、リスクを結びつけている。
祖母は明治、大正、昭和、平成の四代の御代を商売に励み、子供や、孫を熱心に教育した人だ。言うまでもなく数々の戦争や、激動があった時代を生き抜いた。その祖母が「我が家は変化が激しかったからこそ生き残ってこれた」と生前話していたいとあとで聞いて大変納得した。レバノン生まれのタレブの一族ならきっと祖母と話しがあっただろう。
「反脆弱性」を読み始めた - HPO機密日誌
「GAFA」において、スコット・ギャラウェイは、現代の黙示録の四騎士、Google、Amazon、Facebook、Appleの四社の戦略がどれだけ人類の根源的な欲望と結びつけているか、かゆいところに手が届くように分析している。特に今後の個人情報の扱いにおける大きな騒乱の予感は大切だ。米国の一流の知性の教養とビジネスセンスが結びつていることがよく伝わる。
リドレーの「進化」にはすでにタレブの「反脆弱性」を読んだ知的な興奮が伝わる。そして、タレブと同様古典と現代の問題を深く結びつけている。ルクレティウスだ。リドレーは、多くの事象、人の認識の根源に「スカイフック」、超越的な存在があることを明確にしている。エピクロスの「原子と真空以外なにも無い」という徹底した認識から、ルクレティウスはすべてにおいて神の存在、自然の驚異を仮定する必要がないことを主張した。リドレーは、見事に現代の科学、社会に対してルクレティウスの主張が適用できることを示している。
「物の本質について」のどのページをめくっても強く感じられるのが、世界についての科学的な見方ー無限の宇宙空間で原子が不規則に動き回っているという見方ーに一人の詩人が抱いた驚異の念が溢れているいることである。驚異は神々や悪魔や来世の夢に従属するものではなかった。ルクレティウスの驚異の念は、われわれ人間が星々や海やその他の万物と同じ物質でできているという認識から沸き起こったものだった。そしてこの認識こそが、われわれが生きるべき理想の人生の基盤となる、とルクレティウスは考えた。(16ページ)
今から二千年前、真実はすでに記されていた。 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ
- 作者: ルクレーティウス,樋口勝彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1961/08/25
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なんというか、いずれの知性も古典的な知識から、現代の事象の認識まで、なににとらわれることなく、徹底して考え抜いていることが書作から伝わる。心から尊敬していたい。50代にはいって、読書も減り、ますます知的スタミナの衰えを感じていてはならないと自分に言い聞かせたい。