アガサ・クリスティのミステリより意外な真犯人だった。
- 作者: アンドリュー・パーカー,渡辺政隆,今西康子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
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....と、書いたものの、ブログにまとめるためにメモ代わりに過去につぶやいた本書関連のツイットが見つからなくなってしまった。タグで「#In_the_Blink_of_an_Eye」をつけていたはずなのに、記憶の半分もでてこない。大文字小文字を間違えたのか?
単語としての"In the Blink of an Eye"で調べると無数に出てくる。慣用句なので当たり前。当然自分の「メモ」ツイットはみつからない。
私の英語センスのなさを露呈させるだけだが、"In the Blink of an Eye"という表現はすごいと感じ行っている。"a"と"the"の使いわけ、"Eye"であって"Eyes"でないなど、英語として練れた表現。しかも、カンブリア紀の爆発が500万年という「またたく間」に生じたことと、「眼」の発生によってその爆発が起こったことを表現しきっている。
In the Blink of an Eye: How Vision Kick-Started the Big Bang of Evolution
- 作者: Andrew Parker
- 出版社/メーカー: Natural History Museum
- 発売日: 2017/04/01
- メディア: ペーパーバック
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さて、本題へ。
先カンブリア時代にカンブリア紀の爆発が準備されていたことは承前。
38の動物「門」がそろったところで、いよいよ眼の誕生に入る。カンブリア紀の爆発により多様な形態の生物種が爆発的に誕生した原因をさぐるミステリーが本書。当然、本書の主張は進化によって「眼」が獲得されたためだと。眼が捕食を数万倍の効率まで捕食を強化したために、進化の圧力がカンブリア紀で一気に増したと。
本書は欧米の科学解説書の伝統を踏み、基本の基本から教えてくれる。では、まず眼とはなんなのか?言うまでもなく、光学的特性を活かした「カメラ」であり、「望遠鏡」でもある。
光学的には、散乱、反射、屈折の特性が知られる。生物の眼もまさにこの3つの光学的特性を応用している。複眼、単眼という以前に、眼には、窟眼、反射眼、カメラ眼の3つの種類があるというのだ。それぞれ、光の散乱を利用したピンホールカメラ、反射を利用した反射望遠鏡、屈折を利用したカメラに相当する。反射望遠鏡は「ニュートン式望遠鏡」とも言われるが、天才ニュートンに先駆けること数億年、生物はすでに反射を利用した、光の少ないところでも見えやすい「眼」を考案していたのだ。
そして、これらの「眼」はその形態を分析していくと光学的特性にのっとっているということだけでなく、生物の表層部の光をほんの少し感じる単純な細胞から分化していってことがわかる。眼という非常に特殊な器官がどうやって進化から生まれたか素人には不思議でならない。しかし、表層部のほんのすこしのくぼみのような形態から実は40万世代という進化の道のりから言えば比較的短い期間で眼まで進化しうるのだという。
眼の起源が一度であるか、複数回であるかは、眼の定義にも依存する。眼の形成に用いられる遺伝的機構は、眼を持つ多くの生物に共通している。これは祖先がなんらかの光感受性のある器官を、専門化された光学器官は欠いていたとしても、用いていたことを示唆する。しかし光受容細胞でさえ、分子的によく似た化学受容細胞から何度か進化した可能性がある。光受容体細胞もおそらくカンブリア爆発のかなり前から存在していた[9]。高位の類似点、たとえば脊椎動物とタコ類で独立して水晶体にクリスタリンが用いられていることなどは[10]、より基本的な役割を果たしていたタンパク質が眼で新規の機能を持つに至ったコオプション(外適応)が起きたことを意味する[11]。
眼の進化 - Wikipedia
では、どの生物「門」が最初に眼を発生させ、最初の捕食者となったか?動物門の内で、6つの「門」が眼を持っている。
私達人類も含まれる脊索動物門の眼は残念ながらカンブリア紀以降に眼を発達させたことが立証されている。ナメクジのようなこの生き物が私達のかよわき先祖なのだと。
そして、なんとカンブリア紀の大爆発を起こした生物種である「真犯人」は三葉虫であったと。三葉虫の先祖が眼を生物種として初めて進化させた。そして、カンブリア紀の始めに捕食動物となった三葉虫が、他の種への進化圧となり多様な形態を産んだのだと。
実に知的な体験をさせてもらった。まがりなりにも視覚に関する勉強をさせてもらっていた者として最初から最後までわくわくしながら読み進められた。
■追記
Wikipediaの「進化」の項に眼の進化の図が描かれていた。
進化 - Wikipedia