HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「官僚とメディア」再読

タイトルは「官僚とメディア」ではなく、「官僚とリーク」とすべきだったと思える本。官僚とメディアが「ニュース」をめぐってすりよってる姿が赤裸々に描かれている。今も、昔も、情報をリークする行為は官僚側の権力の源泉となっているといっていいほど。

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「官僚とメディア」では官僚がメディアに情報をリークしたいくつかの事件を綿密な取材にもとづいて書いている。特に、姉歯事件の官僚達の騒ぎ方については実に的確に書いている。2005年末に姉歯事件は発覚した。その1年少し後に建設業界以外の人がここまで明確に実際の事件の構造を把握していたことはかなり評価すべきだ。著者は、はっきりと姉歯の単独犯であったと断定している。姉歯氏の単独犯という筋で裁判の判決がでたのは、そのはるか後。

そもそも耐震偽装事件の対象となった建物の耐震性については、法律で認められているいくつかの構造計算のやり方で評価のしようもあったし、柱梁の最低限の補強で建物の耐震性は建築基準法に基づく基準にまで高めることは十分に可能であった。それなのに、最初の通報から二週間あまり放置した行政の責任回避のために姉歯耐震偽装をマスコミへリークした。このリークによりマスコミが騒ぎ始め姉歯事件は大きな大きな「事件」となり、幾人かの自殺者を出すまでになった。今日に至るまで耐震偽装の建物そのもので死んだ人は一人もいないのに。東日本大震災を経ても残った建物で被害が出たものはない。

どの筋からかはわからないが、当時あまりに安易に耐震偽装疑惑の建築物のリストがリークされた。私は行政の担当官が責任回避のためにリークしたものだと想っていたが、やまもといちろう氏の記事があまりにスピーディに出ていたところを見ると、政治家の筋であったのかもしれない。いずれにせよ、政府、政治家が責任を逃れるためにマスコミを利用し、そのもくろみは見事に成功した。

耐震偽装とマスコミへのリーク - HPO機密日誌

それにしても、同じ本を10年おいて二度楽しめるとは本当に自分って得な性格だなと。記憶力悪いなと落ち込む・・・。あ、私だけじゃない!「官僚とメディア」のリークをめぐる馴れ合い体質という構造でいつも「事件」で世間の人々がいまもまた騒いでいるんだった!