HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「マンションにいつまで住めるのか」、ふたたび

杭のデータ偽装問題より以前から、マンションにはさまざまな問題がある。区分所有といっても実際は共有。共有はトラブルの元、というのが昔から言われる。特に高層マンションの場合、以前から指摘されているようにメンテナンスの方法も確立していないといっていい。

マンションにいつまで住めるのか (平凡社新書)

マンションにいつまで住めるのか (平凡社新書)

著者によれば、「マンションといえば欠陥という言葉が跳ね返ってくるほどに、建物の欠陥は分譲当初につきまとう問題である」のだそうです。実際としては、民間ばかりではなく、某公団さんが販売された物件で、「あまりのひどさに建築14年目に建物を取り壊して、新築時とそっくりそのまま立て直すという例も出ている」のだという衝撃の事実もたんたんと本書で語られていました。これは、かなりびっくりしました。あれだけ超高層マンションが次々と建てられている中、外壁のメンテナンスの問題、滑落の問題、ベランダを長期にわたり支える構造、結露の問題、配管のメンテナンスの問題など、相当程度研究されつくし、マンション建築というのはすでに確定技術になっているものだと信じてきました。マンションを買う方というのは、相当程度にどのような問題が発生しうるのかというリスクを十分に把握した上で購入すべきなのではないでしょうか?そうでなければ、構造を偽造したりはしないまでも、技術的な未発達に起因するトラブルに入居後ぶちあたることになるかもしれません。

[書評]マンションにいつまで住めるのか: KEN: (仮称)建築屋の社長ブログ

あえて、リンクはしないがウェブで「マンション 欠陥」で検索するとさまざまな問題が出てくる。問題が出てきた時に、共有物であるマンションは一人の所有者が意思決定しても、全体のおもわくの中ではなかなか実効性のある合意にいたらない。あるいは、共有物でたくさんの所有者がいればどうしても集団心理的に過激な方向へ走っていく。欠陥に対する妥協点を見いだすことは極めて厳しい。

杭のデータ偽装の問題も、区分所有のマンションでなければ、これだけの大問題になってはいなかっただろう。共有物であるがゆえに、建て替えという最大限の提案ですら、所有者には受け入れがたいものとなる。

ここまでのところ、データの偽装、結果として杭が支持層に達していない可能性があるということを、どのように法律上で責任を持たせるかは微妙だと言える。法的な責任が明確でない状況において、三井不動産レジデンシャル社が傾きのない、瑕疵のない棟まで全てを建て替える決断をしたのは、業界のリーダーとして信頼回復への大きな貢献だと受け止めたい。

建築物の傾きと瑕疵担保期間 - HPO機密日誌

だから、戸建てがいいとはいわない。繰り返しになるが、マンションに住むということはどのようなリスク、どのような建物のライフサイクルコストがかかるかは、理解した上で買うべきであると主張したい。