HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

耐震偽装とマスコミへのリーク

つい先日、知人と耐震偽装の話しを冗談まじりでした。ようやくもう記憶から外せるねと。建築確認のプロセスも偽装がきっかけで面倒くさいだけのシステムになっていたのも、大分正常化したね、と。

(2)構造計算適合性判定制度の見直し
 構造計算適合性判定を都道府県知事又は指定構造計算適合性判定機関に直接申請できることとするとともに、比較的簡易な構造計算について、一定の要件を満たす者が審査を行う場合には、構造計算適合性判定を不要とすることとする。

報道発表資料:建築基準法の一部を改正する法律案について - 国土交通省

耐震偽装事件はもう終わったのだとという安易な思い込みが、意外なかたちで砕かれた。

特は流れ、日本には未曾有の大災害が襲い掛かった。2011年3月11日。東日本大震災。東北沖を震源とした1000年に1度の大災害は日本人のあらゆる思考パターンや文化を変えるに至った。東北が震源地ではあったが、当然、関東地方もかなりの揺れを経験することとなる。しかし、みんなが忘れそうになっていた事実があった。そう。姉歯物件だ。当時、震度5か6でパターンと倒れると報道された姉歯元1級建築士が設計したマンションは果たしてどうなっているのか?!答えは…ビクともしていなかった。

当時、姉歯氏はこう語っている。「耐震に関してはかなりの強度を保っておりますし、震度7や8にも十分耐えられるはずです」そう、関東地方にある姉歯物件は実はフジテレビ関係者も住んでいた。お台場にあるフジテレビ本社にはかなり交通の便の良い所に姉歯物件が存在するのだ。ちなみに、それらの姉歯物件だが、少なくとも僕の知る限り…1棟もヒビ一つ入っていない。要は姉歯氏の言っていた言葉の方が正しかったのだ。

国土交通省省の定める耐震強度がそもそも、あまりにも強すぎる設定になっているだけで、姉歯氏の計算通り、1000年に1度の地震が来ても、彼らの物件やマンションはビクともしなかったのだ。

あの姉歯物件は東日本大震災でビクともしていなかった。「臭いものには目をつむる」マスコミに蔓延している体質

しかし、姉歯氏の判決は震災後に出ている。そして、建築確認を出した行政には責任はないと最高裁が決めた。

これに対するやまもといちろう氏の反論が不快だ。しったかぶりの素人はだまっていろと。これ以上関係者を傷つけるなと。

長谷川豊氏が指摘するように、耐震偽装に対してマスコミの報道はあまりに無責任だった。本来、個人法人の資産に深く関わる事案であり、極めて技術的な問題であるので、安易な報道、誘導は控えるべきであった。しかし、顛末は多くの人の知るとおりだ。

そして、私にはどの筋からかはわからないが、当時あまりに安易に耐震偽装疑惑の建築物のリストがリークされた。私は行政の担当官が責任回避のためにリークしたものだと想っていたが、やまもといちろう氏の記事があまりにスピーディに出ているところを見ると、政治家の筋であったのかもしれない。いずれにせよ、政府、政治家が責任を逃れるためにマスコミを利用し、そのもくろみは見事に成功した。

行政がどのような態度をとったのかは、藤田東吾氏の「月に響く笛 耐震偽装」 に詳しい。

太古のハムラビ法典が定める通り、「目には目を、歯には歯を」であり、「目には、目と歯を」ではない。

若し、建築家が人のために家を建て、その工事が堅固でなく、建てた家が倒壊し、家の主人を死に至らしめたときは、建築家は死刑に処せられる。若し、主人の子供を死に至らしめたときは、建築家の子供が死刑に処せられる。・・・・・・・若し、家財を損壊したときは、損壊したものすべてを、修復しなければならない。かつ、家が堅固でなく倒壊したのであるから、建築家は自己の費用で倒壊した家を復旧しなければならない・・・・・・

建築基準法のご先祖様はハムラビ法典 - HPO機密日誌

建築にかかわる者として、姉歯氏を弁護する気はさらさらない。耐震偽装は大きな罪だ。しかし、誰かがリークをし、マスコミがリークを受けて安易な報道をしなければ多くの資産は失われなかった。やらなくてもいい建替は行われなかった。姉歯氏の妻はしななかった。

そもそも、建物の耐震性という意味での安全を問題にするなら、姉歯案件よりはるかに耐震性の低い建物は「既存不適格」の原理の下に数多く存在する。耐震偽装事件から10年近く経って、震災も経験して、失われた命は姉歯氏の奥様の命だけだ。法の下の公正、平等からはかけはなれた結果であった。