塚本氏の「つくばエクスプレス最強のまちづくり」を読んでいて、猪瀬直樹の「土地の神話」、「ミカドの肖像」を思い出した。
- 作者: 塚本一也
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- 作者: 猪瀬直樹
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「土地の神話」は主に東急電鉄の成り立ちについて、「ミカドの肖像」は西武電鉄について。いずれも単なる企業の成り立ちを超えて、鉄道と土地開発の一体沿線開発とはなにか、華族の没落と土地の関係など、明治から大正、昭和にかけての見事な現代史にもなっている。
東急も西武も元をただせば、ハワードの「明日の田園都市」、レッチワースの開発に始まる。今も高級住宅街として知られる「田園調布」は、このレッチワースをモデルとしている。「田園都市線」というネーミングも当然、ハワードにちなむ。半円形状の街の形はレッチワースそのもの。
- 作者: エベネザー・ハワード,山形浩生
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ただし、ハワードになかった天才的ひらめきを示したのが、阪急の創設者、小林一三。ハワードの田園都市は、田園部に都市の快適さをもつ職住近接の街を作ること、そしてこの街づくりが十分に採算に合うことを示したことに意義がある。これに対して、小林一三の天才は、鉄道の路線免許と合わせて沿線の都市開発を行うことを創始したことだ。東急田園都市のたまプラーザや、あざみ野などの拠点駅では周辺部から土地、建物を売り、最後に駅前開発を行ったのは、沿線開発により土地の価格が中心部ほどより上がっていく仕組みを意識してのものだ。
ハワード、小林一三の日本における最後の末裔がつくばエクスプレスの沿線開発だ。三井不動産グループがこの仕掛には数十年に渡って関わっていることは忘れられてはならない。まだ、関東鉄道という単線しか走っていな頃から、パークシティー守谷を開発するとか、柏の葉周辺のゴルフクラブの土地と三井不動産元社長の江戸英雄氏所有の土地の提供などを行っていた。
茨城県筑波郡作岡村(現・つくば市)に生まれる。下妻中学、正則英語学校を経て、旧制水戸高等学校を卒業し、東京帝国大学法学部に入学。外交官を目指して1日15-16時間の猛勉強を続けていたが帰郷中に寄宿先が関東大震災の被害を受け、その後始末の苦労で体調を崩し、結核で倒れて外交官への道を断念[1]。卒業と同時に三井財閥の本部機構である三井合名会社に入社。(中略)1947年、三井不動産に入社。1955年、代表取締役社長に就任。1974年、社長を退任し三井不動産代表取締役会長。
江戸英雄 - Wikipedia
塚本氏の構想がこうした沿線開発の由緒正しい伝統を継承され成功を収められることを祈ってやまない。