HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

文化相対主義としての「サピエンス全史」

ユダヤ人とは言え、これほどまで強烈にキリスト教の文化を相対化した文章にお目にかかったことが無い。

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サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

西欧の「自然」という概念すら、キリスト教の正統かいなかだとは想っていなかった。確かに、老子などの「タオ」と西欧の「自然」とは違う。

実際には、「自然な」と「不自然な」という私たちの概念は、生物からではなくキリスト教神学に由来する。「自然な」という言葉の神学的意味は「自然を創造した神の意図に一致した」ということだ。

そう考えると、pro、conというと、堕胎を認めるか認めないかを意味するほど、「自然」なセックス、「自然」な分娩にこだわり、右派左派を分ける試金石になるほどの重大事であることがわかる。

ハラリの根本的な疑義は、アリエスを思い出させる。

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活

ハラリは夫とともに、エルサレム郊外にあるモシャブ(農業による生活共同体)に住んでいる。同性愛者であることが、常に通説に疑問を持つ彼の性格に影響を与えているという。

「『当たり前だ』と思っていいことなんてありません。たとえそれが、万人に信じられていたとしても」

ハラリの本を読む楽しみの1つは、世間では当然だと思われていることを再考するように我々を導いてくれることにある。彼は流行に時間を費やしたりはしない。

「人類は10年後には細胞肉を食べ、100年後には消えるでしょう」|『サピエンス全史』の著者が17の質問に答えます(後編) | クーリエ・ジャポン

実に楽しい読書体験だ。