北へ、南へ、そしてまた北へ、ノモンハンへと、ウムボルトの活躍の終わりが見えてくる。
- 作者: 安彦良和
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8巻の表紙のウムボルトと麗花の馬上の姿が切ない。恥ずかしなら、ここまで来て私は安彦良和さんの歴史認識の深さ、ストーリーテラーとして、作画家としてのすばらしさを知った。登場人物のほとんどが実在の人物であり、これまで読んできたどの戦史よりも人物が浮かび上がって見えた。
ノモンハンの日ソ戦闘に翻弄されるウムボルト。死を賭してでも、ウムボルトを慕う麗花。中国、蒙古、新疆、日本と多くの血をひくこの二人は、ある意味で満州国の五族共和のシンボルである。そして、その悲恋の終わりに満州国が象徴されている。そもそも、記憶喪失のまま歴史に翻弄され、それでも自分のアイデンティテイ、理想を求めるウムボルトの生き方も、また満州国を象徴している。
ともあれノモンハン。
日本が参加した戦争を分かりやすく説明(ノモンハン事件編) - Yahoo!知恵袋
1939年のこのノモンハン事件、いや、日ソ戦争の緒戦は、辻政信ではないが、やり方によっては世界情勢をも変えられたかもしれない。歩兵重視、逐次投入、軍政の混乱など、帝国陸軍の悪しき側面がおおく現れた。それにしても、混乱する欧州情勢の中で、以後1945年8月にいたるまでソ連の南進を思いとどまらせるだけの戦果はあったと評価したい。ここでもっと拙劣な戦いをしていれば、もっとはやくにソ連は日本へ侵攻を開始していただろう。