読む前からこれは自分は無傷では読み終われないだろうという予感があった。だが、この痛みは予想以上であった。短編集の1作目である「ドライブ・マイ・カー」でもう相当に痛めつけられた。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/04/18
- メディア: 単行本
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小説世界に入り込むのは、自分との妙な共通点から始まる。たとえば、この短編の家福と私の20年に少しかける結婚生活。それから、「ワーニャ叔父さん」。そして、共通するあといくつかのこと。
「ワーニャ伯父さん」を演じた冒頭のNさんは、40代を生ききれなかった。
盛りをすぎた中年男 - HPO機密日誌
さかりを過ぎた私の人生もいくつかの別れと、いくつかの親しい者の死に覆われている。取り返しのつかなさは、もう手の施しようがない。若い頃一緒の舞台に立ったNさんも、パートナーを残して死んでしまった。
自分の妻と寝た男との友情などまるで、「ことの終わり」だ。そう、あれも女の方が先に死んでしまうし。
The end of the Affair -- Part 1 - YouTube
遠藤周作を読んでからこの映画を見れてよかった。妻と一緒に見れて良かった。
情愛は嫉妬を産む。嫉妬は憎しみにつながる。憎しみは絶望につながる。そこまでは私にもわかる。この物語はその先を語っている。妻とは、遠藤周作の言葉がこの物語にすべてはいっているね、という話しをした。
「ことの終わり」を見る - HPO機密日誌
もう妻であったこの女と私が過ごす人生はない。私の人生の一時期には、この女との幸せな時間が確かにあった。しかし、今、それらの思い出は別の想いに覆い尽くされている。後悔しても仕方がないことで、覆い尽くされている。それは、家福の想いと同じ。
私の現在の毎日は一見すると騒々しい方だが、家福の生活の静けさがよく分かる。妻のいない男、女のいな男の生活はごくごく静かだ。