HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

改憲の対象とすべき日本国憲法の数々の欠陥

歴史的に見れば、日本国憲法は1週間で米軍の将校が作った英文ありきだった。時間も、法律知識も不足したままで作った不完全な英文憲法案を、やらされ感満載のまま翻訳したやっつけ仕事の日本国憲法条文のため、第9条だけでなく現行の憲法には不備、欠陥がたくさんある。もし、近々改憲することが可能になるのなら、以下の問題ある条文もぜひ修正して欲しいものだ。

日本国憲法七つの欠陥の七倍の欠陥」は、大変勉強させていただた。ありがとうございます。

日本国憲法 七つの欠陥の七倍の欠陥―だれでもわかるやさしい憲法のお話し

日本国憲法 七つの欠陥の七倍の欠陥―だれでもわかるやさしい憲法のお話し


■前文:国家元首の問題

まず第一の問題。国家元首の定めがない。主権在民であっても、「国民の代表者が行使する」と前文にある。では、国民の代表者とは誰なのか?明確に書いてない。天皇は象徴であり、国会は「国権の最高機関」である。「行政権は、内閣に属する」のだから、一応現行の解釈では首相を含む内閣が国家元首を構成すると言われている。しかし、憲法に明確な規定がないのは欠陥だと言える。

ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

日本国憲法

ここについては、過去にも書いた。


■第7条 天皇陛下の国事行為のうち『第3号 衆議院を解散すること。』

saitotaさんのご指摘で改めてびっくりした。現行憲法には誰に衆議院の解散権があるか書いていない。強いて言えば、第7条第1項第3号の天皇陛下の国事行為に「衆議院を解散すること」とあると。この条文が不思議なのが、他の国事行為にはすべて「公布する」、「認証する」とあるのに、この箇所だけ「解散する」とある。これまで、首相にのみ解散権があると思い込んできたが、六十九条にはこうある。

第69条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

ところが、第7条は「内閣の助言により」とあるので憲法通り衆議院を解散しようとすれば、内閣の決議となる、これまで数々首相の一存で衆議院を解散させてきたのは、憲法違反となる。どういうこっちゃ!と叫び出したくなるくらい、根本的な欠陥だ。


■第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」のと、前第11条の「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」との矛盾

これは読めばわかる。一旦国民に「侵すことのできない永久の権利」として「与へ」ておいて、「これを保持しなければならない」と国民の義務にすることの矛盾は明確だ。たぶん、合衆国憲法の第6章第3項をベースにしておいて、行政官たちを国民に置き換えたのだと。

第6章[最高法規]

(中略)

[第3 項] この憲法に定める上院議員および下院議員、州の立法部の議員、ならびに合衆国および各州 のすべての行政官および司法官は、宣誓または宣誓に代る確約により、この憲法を擁護する義務を負う。

http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-constitution.html

合衆国憲法には、国民の義務、権利に関する条項が元々なかった。文字通り「州」の連合体であるため、市民権の規定は各州にゆだねられている。これを市民国家としての日本国憲法に置き換えられるほど米軍の担当官たちは法律に精通もしていなかったし、日本の政体についても理解もなかった。

よって近代憲法民法の面から定めるべき原則である「所有権絶対の原則」、「契約自由の原則」、「過失責任の原則」も明確には書かれていない。そして、これらは国民が互いに守り尊重すべき義務でもある。

そして、「自由及び権利」の源泉である国と憲法を国民が守らなければならないという義務についても書かれていない。これも保守を自認する私からすれば欠陥だ。

日本人であるための「要件」を憲法から考える - HPO機密日誌


■第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」 => 「公共の福祉を優先、維持するためを除き、国民の権利を制限する法律を制定してはならない。」

これもsaitotaさんのおっしゃるとおり。翻訳の言葉足りなさ以外のなにものでもない。

「法とは国家権力の行使に対するワク」 - HPO機密日誌

本来、次の第15条とあわせて、公務員、政府の横暴を避けるための条項であるべき。


■第15条 公務員の罷免権 

これは以前散々書いた。憲法の条文に「公務員を罷免できる」と書いてあるんだから、罷免できるように法律を整備するのが正論だと想う。実際には、諸所の関連法規により公務員の労働者としての権利の方を逆にがちにされ「内閣総理大臣ですら市役所の役人を罷免できない」のが現状だそうだ。誰かこうしたら罷免できたという最高裁判例を作って欲しいものだ。そうすれば、もう少しお役人、特に地方のお役人が緊張感をもって仕事をしてくれると信じる。

  • 第36条 「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」

じゃあ、死刑はどうなのか?と。公務員以外の拷問はゆるされるのかと?政治家ならいいのか?不思議。


■第66条2項 「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」

9条との矛盾。軍隊を認めない、軍隊がないなら、日本に軍人はいない。軍人がいなければ、軍人と文民の区別もない。文民と明記する必要がない。逆に言えば、きっと日本は再軍備されるだろうと予言するような条文。


■第89条 私学への助成金の禁止と宗教団体への助成の禁止の違いとは?

第89条 2002.05.10「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」

第20条1項の「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」は強力に戦後日本で強調され、行使されている。しかし、「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」、つまりは私立の福祉施設、私立の学校、あるいは私立の社会教育機関には「公共の財産」を供する、つまりは助成してはならないと。私は数々のこうした憲法違反の事例を見ている。戦後、福祉施設、私学、公共社会教育機関で公共の補助をひとつももらっていないところがあるだろうか?この矛盾は強力に解決すべき。


■第76条2項 「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」

じゃあ、第64条の国会の弾劾裁判はどうなのよと。パフォーマンスめいた裁判劇を過去に国会は何度も演じている。これらは特別裁判所ではないのか?saitotaさんのおっしゃるとおり。


■第95条 「一の地方公共団体のみに適用される特別法」の「住民投票

沖縄とか、北海道とかの特別法がある。これらは基本的に、沖縄県、北海道という「一の地方公共団体のみに適用される」特別法だと理解している。過去に一度でも住民投票したことがあるのだろうか?不勉強のせいか私は知らない。

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結果からするとほとんどsaitotaさんのサイトの焼き直しとなってしまった。自分の不勉強が恥ずかしい。これだけのごく技術的な面での欠陥もいいかげん国際的に恥ずかしいので、改憲して正して欲しいと想うのは、私だけではないと信じる。

第96条の国民投票については、様々なところで議論されているので書かない。