「日本思想という病」は素晴らしい本だ。まさに太平洋戦争から戦後までを総括している。中ソの影響かにおける偏向からも、米国一辺倒の保守からも離れ、長い長い日本の歴史の中で正当に昭和の時代の思想史を位置づけようとする試みに成功しているように私には思える。山本七平を含む、このところ読んできた戦記物、もしくは戦時の虜囚体験が結ぶ像を明確にしている。
中島岳志の保守、右翼、ナショナリズムの明確な整理整頓の後の、片山杜秀の「中今・無・無責任」は「未完のファシズム」のおさらいといった感じであった。
ああ、なるほどと感じたのは、本セミナー論文が示しているのは昭和の挫折は昭和の挫折の特殊な条件であって、丸山真男が主張するように日本の歴史から普遍的な帰着ではない。「日本的」とはなにかをあまり固定的に考える必要はないという部分に赤線を引いておきたい。