HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「鞭を惜しむと子どもをだめにする」

私は三人の子どもの親でもある。仕事の悩みも尽きないが、人並みに子どもの教育、養育方針にも悩んでいる。私には、子どもたちを片親にしてしまったという負い目もある。悩んですえに、ここ数年はほぼ放任状態。だが、我が子三人は誠実に生活し、真面目に学んでくれている。ありがたいことだ。

トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)

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それでも、山本七平が引用している「ベン・シラ」の言葉には考えさせられた。

「子を甘やかす人は、その子の傷に手当てしなければならないくなり、その子が叫ぶごとに父の心は引き裂かれる。よく馴れていない馬はすぐに拗ね、したい放題をしている子は頑固者になる。したければ、子をちやほやするがよい、そうするとあなたは子を恐れるようになるだおう。子とたわむれるがよい、そうするとあなたは子に泣かされるようになるだおう。
子とともに笑うな。あなたが子とともに泣きたくないなら。結局あなたは歯ぎしりすることになるだろう。
子が若いときには自由を与えず、その愚かな行為を見すごすな。子が若いときには背をかがませ、まだ子どもの頃から、脇腹を叩け。そうしないと彼はあなたに背き、言うことを聞かず、あなたを悲しませるであろう。子を育て、つくり上げよ、そうしないと彼の無礼をしのばねばならなくなる」

山本七平もこの後に聖書から引いているが、「鞭を惜しむと子どもダメにする」と。子どもの頃、「トム・ソーヤー」を英語で演じた時、ポリー伯母さんのこのセリフが印象に残った。元は箴言の言葉だそうだ。

He that spareth his rod hateth his son: but he that loveth him chasteneth him betimes.
(鞭を加えないものはその子を憎むものである。子を愛するものはつとめてこれを懲らしめる。)

英語のことわざ Spare the rod and spoil the child. Love well, whip well. He that loves his child chastises him. English Proverb

言葉を換えて「『喜・怒・哀・懼(おそれ)・愛・悪(にくしみ)・欲』の七情を爆発させよ」と示唆する日教組の教師のエピソードも山本七平はひいている。いわく、「廊下は静かに歩かなければならないのか?生徒は自由にあばれまわる権利がある」。いわく、「週番の目標は達成されなければいけないのか?誰に強制する権威があるのか?」、等々。これを見た校長が「なんと愛情のない言葉か」と嘆いたのだと。まさに、「子を愛するものはつとめてこれを懲らしめる」を実践されている校長先生なのだろう。

ポリー叔母さんのセリフは続く。「亡くなった妹の子だもの、かわいくないわけはないさ」と。愛があればこそ、父として、決然と子どもに鞭を加える勇気を持つべきなのだと改めて想った。

もちろん、子を子として素直に見ることを大前提とすることはいうまでもない。ただ、「素直」な見方をする努力のために時間をとられて、「betimes=つとめて」適切な時節に「懲らしめる」ことを躊躇してはならないのだと。