HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」に見る組織マネジメント

組織はほっておけば腐るもの。いかに腐らせないかは、規格に収まらない人財をいかに抱えつづけられるかだ。だが、規格に収まらない人財ばかりでは、組織が四分五裂してしまうことにもなりかねない。この辺のバランスをいかにとるかがリーダーシップの妙。ま、いうまでもなく青島警部補なのだが。

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 - STORY

以下、あえてネタバレせずに「踊る大捜査線」という作品が示すマネジメントの在り方を考えてみる。

組織のマネジメントとは、組織の目的をきちんと果たすこと。目的をきちんと果たすとは、組織のルール、組織の構成員である個人の能力、そして組織の風土の3つをきちんとマネジメントすることだ。

ルールが強すぎると、多様性がなくなり、組織防衛が至上課題になってしまう。なにより、そこで働いていて楽しくなくなってくる。かといって、個人の目的志向が強ければ、ルールはいらないかというとそうではない。多様な人間がいて、安定して組織的に働くためには、最低限のルールが必要だ。よいルールは、その組織をより目的志向の形にする。個人の動機の部分とよいルールが重なるとき、組織は特に大きな力を発揮する。本映画ではこの対立軸が警視庁の上部の人財の対立として明確に描かれていた。シリーズを通して、「所轄」の湾岸書と「本店」こと警視庁の対立として描かれるとも言える。

現場に密着した、個人の能力によって、組織の総合的な「力」が決まる。そもそも、組織の「知」の全てを把握している人間は一人もいない。営業の工夫であれ、生産機械のメンテナンス方法であれ、意見の調整の方法であれ、組織の知は分散している。湾岸署の個性あふれるメンバーは、知性、情熱、意思のそれぞれの面で組織の「知」を担っている。誰がどの役割かを類推するのは楽しい作業だ。

この分散した「知」を現場で生かすために、いい組織では先輩の言葉を大切にしている。先輩の言葉の本質をくみ取る努力を常にしている。故いかりや長介が演じた老刑事、「和久さん」の存在は実に大きい。死んでも「手帳」として組織に参加している。

個人の能力を組織の中でいかに成長させられるかが、組織の本当の力だ。そして、個々人が組織の中でいかに成長するかは、明文化されていないルール、いわば家風、社風が非常に大きい。家風、社風とは、個々人の間の愛だ。いかに仲間としてお互いに認め合い、お互いを成長させあえるかがその組織の価値であり、力だ。組織に成長をもたらすものこそがドラマだ。物語だ。湾岸書で起こった様々なドラマが個々の登場人物を成長させたのは間違いない。

ま、いい映画だった。