遠藤周作の言葉が迫る。

- 作者: 遠藤周作,鈴木秀子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/06/16
- メディア: 文庫
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この本は、生前の遠藤周作の言葉を鈴木秀子さんがテーマごとに選び、集めたもの。実に胸にささる言葉を鈴木さんは選びぬいている。
恋の不安、苦しみ、嫉妬は情熱を燃え上がらせる。逆に不安、苦しみ、嫉妬などがなくなると情熱は色あせていく。
私は、これまで嫉妬の苦しさを知らなかった。いくつかのことがらがあり、いくつかの間違いがあり、苦しい思いをした。自分が自分だと思っているなにかなど、はかないものだ。苦しさの中で、自分の意思では自分が動かないものだとつくづく教えられた。自分は、自分の「社長」ですらない。
では、私を動かすXとはなんなのか?
では、家族や親友さえも知らない「私」とはいったい何だろうか。正宗白鳥はむかし「誰でもそれを他人に知られるくらいなら、死んだほうがいいと思う秘密がある」と書いたが、この「私」とはそんな意識的な秘密を含めたもっと深い私なのかもしれない。
そして―――
そして、私は自覚的な自分―――私ならば遠藤周作―――以上に、もっとこのはみ出た自分、それだけではない自分、得体の知れないひそかな自分―――狐狸庵のほうが本当は神というものと関係があるような気がしているのである。
ここで私は言葉を噤むべきなのだろう。先日のM・アウレリウスのストア哲学や、カオスとフラクタルと結びつけたい欲望がまたむくむくしている。しかし、この遠藤周作の言葉で私には充分だ。