HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

パイドロス その1

風邪をひいて頭がぼうっとしている。妙に疲労感があり、つらい。

そんな体調にもかかわらず、「禅とオートバイ修理技術」はすっと入って来る。

禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

村上春樹の小説ではないが、著者のパーシグのように「1年11ヶ月間」を「デジタルコンピュータのマニュアルを編集」する仕事をして、残り1ヶ月をバイクに乗ってすごせたら、とても心しずかな人生になるのではないかとあこがれていた。いまはいまの私の仕事のように常に変化しつづけることが、当たり前になってしまった。もはや静かな生活はできないであろう。

パイドロスが仮説がいくらでも浮かぶというくだりをさっき読んだ。きっとこの人は複雑なプロセスが見えてしまう人なのだろう。だが、プロセスが見え、すべてを記憶でき、IQ170な人生は幸せとは限らない。逆に言えば、プロセスが際限なく浮かび、すべてが記憶されてしまう人生は、バランスをとるために気が狂わざるを得ないのかもしれない。人としてのカテゴリーを超える知性を持ちながら安定した人格を保つという「あなたの人生の物語」はどこか異常さを含むのだろうとしかいいようがない。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

(以下ネタバレあり)




と、ふと、いまの著者の人格はパイドロスのデザインしたものではないかという不気味な想像が浮かんだ。電気ショックはそのために意図された「手段」ではなかったかと。

著者にならい読みながら、思索を続けることにした。