たかだが10分ほどで書いたエントリーにブクマをたくさんいただいた。かなりのエネルギーと思いを込めたエントリーがほとんどアクセスがないのに!まさに、ウェブのアクセスはべき乗則なのだと実感させていただいた。柳の下のどじょうを狙う本エントリーも注目はされないであろう。
いうまでもないが上は本ブログのアクセス履歴。下は「歴史はべき乗則で動く」のp.235にある金融市場の変動率のグラフだ。よく似ている。
ちなみに、ぶくまの中でべき乗則の具体例が足りないという指摘があったが、ぜひ本書を読んで欲しい。それでも足りなければ、タレブの「ブラックスワン」とマンデルブルの「禁断の市場」を読めば多くの具体例を発見できる。
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: マーク・ブキャナン,Mark Buchanan,水谷淳
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- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛
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ネットの上でもいろいろな方がべき乗則について書かれている。私もほんのすこしだが、はてなのキーワードの「べき乗則」とwikipediaの「冪乗則」に貢献している。だが、まだまだ不十分なリソースしかない。どなたかサポートしていただけるとうれしいところではある。
さてさて、実は本書のひとつの当然の結論である「適切な危機がないと超巨大な危機が訪れる可能性が高くなる」に私は強い想いを込めている。*1
大好きなゲーテのファウストの言葉を借りる。ファウストの最後の理想は、そのまま私の理想の生き方である。
そうだ、己はこういう精神にこの身を捧げているのだ。
[書評] ファウスト、最期の科白: HPO:個人的な意見 ココログ版
それは叡知の、最高の結論だが、
「日々に自由と生活とを闘い取らねばならぬ者こそ、
自由と生活を享くるに値する」
そして、この土地ではそんな風に、危険に取り囲まれて、
子供も大人も老人も、まめやかに歳月を送り迎えるのだ。
いまの日本のなんでも人のせいにして、表層的な保護を求める「空気」が嫌いだ。鳩山首相の「生活を守る」には、失業や破産のリスクを抱えてでも仕事を通して自分の生活を守るというにおいが感じられないから嫌いだ。法律によって結果だけを強制される生活なんて嫌いだ。本書が指摘するように目前の危機を先延ばしにしようとすればするほど大絶滅の可能性は高まると私は宗教的なまでに信じている。*2
たとえば、本書にイギリスのうさぎに繁殖を抑えるために特殊な菌を植え付けたら、「風が吹けばおけ屋が儲かる」式で実際にイギリスの固有種であった青い蝶が絶滅したという話が載っていた。ことほど左様に臨界状態、相転移手前のネットワークの相互依存は緊密なのだ。経済だけでなくごく普通の生活のネットワークも、べき乗則を産む自己組織化臨界状態*3になっている可能性が高い。そこへ、うさぎに菌を植え付けるような目先のことだけしか考えない不用意なことをすると本来ダイナミックな過程である経済的均衡や生活様式を破壊させてしまう可能性を常に含んでいる。法律論は常に理想論であり、自己組織化臨界状態を扱うにははあまりに無神経であることが多いように思えてならない。*4
ゲーテのいうように自由を守るためであれば、危険に取り囲まれていても私はかまわない。危険とリスクに刈り込まれながら、マンデルブルの描くようななフラクタル構造体の枝を成長させようとする日々の努力の継続こそが健全な状態なのだ。
補足だが、本書にも臨界状況を示す形としてカウフマンの適応度地形について描かれていた。
経済市場や生活様式の中での過度に法律や規制や権威に縛られない賢い生き方の形として、「創造的無能」をあげておきたい。
*1:コメントもいただいたが、客観的な事実として地震、戦争、生態系の大絶滅、金融危機など、表面的に保護されればされるほど代殺戮や、大きな絶滅を引き起こす可能性が高くなる例は存在する。ぜひ「歴史はべき乗則で動く」を読んで欲しい。
*2:ぶくまで指摘いただいたが、インフルエンザなどの疫病にも最近では統計学者やネットワークの専門家がかかわり、なんでもかんでも流行を抑えるのではなく、山焼きのような方法をとることがあると...誰かから聞いた。それから、火事だがそりゃあ燃えていれば誰でも消火に走るだろう。ただ、古い町を見ていればわかるのだが、火事があるたびに街の防災は高まってきた。あるいは、耐震技術も発達してきた。先日の中国がそうであったように、あまりに地震が来ない地域では耐震技術、防災技術が発達しないため一旦災害が起こると巨大な被害を生む可能性は高いといえる。
*4:たとえば、http://d.hatena.ne.jp/hihi01/20090331/1238480957、http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2006/04/population_simu_f667.html