「つり広告が少なくなったと思いません?」
電車に乗っていて、妙齢のご婦人から突然話しかけられた。
「私ね、これから句会に行きますの。電車の広告が不景気で以前より少なくなったことを詠もうと思うのよ。」
「この本によるとこれから景気は大分よくなると書いてありますよ。」
私はちょうど読んでいた本をご婦人に見せた。
「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか
- 作者: リチャードクー,Richard C. Koo
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
「そういうえらい人はいろいろなことを言っているけど、私たち庶民のところはまだまだ不景気でしょう。」
そうおっしゃるこのご婦人のみなりに一分の隙もなく、相当な恒産がおありの方のようには見受けられた。
「これからきっと賃金があがりますよ。私も小さな会社の社長なのですが、たぶんもうこの春から賃金をあげないと人がついてこないでしょう。」
笑いながら、席を立ち電車を降りた。こころもちあっけにとられた顔をこのご婦人はしていた。
煙にまくつもりはなかったのだが、やはり私にあまりに貫禄がないということなのだろうか。