HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

すずさんの終戦(ネタバレあり)

この世界の片隅に」秘められたすずさんの想いを、なかなか言葉にうまくまとめられないでいる。言いたいのは、映画版でも、マンガ版でも「この世界の片隅に」の最大のクライマックスは終戦の詔の玉音放送を聞いた後のすずさんの言動であること。

hpo.hatenablog.com

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すずさんは玉音放送を終えて、叫ぶ、はじめて激しく叫ぶ。我慢に我慢を重ね、最愛の姪を失い、大好きな絵を描くことの出来た自分の右手を失い、故郷も両親も失い、それでも必死に生きてきた。最後の一人まで戦えと言われ、すべての人がすべてを犠牲にして戦ってきた。だから、自分も「この世界の片隅」で必死に生きてきた。今更、戦争を止めるなど納得がいかないと。「少なくともここに5人生き残っている!まだ左手も両足もある!最後まで戦え!」と。

マンガ版では、この方がツイットしてくださっている前後のシーンのセリフ。「暴力で従えとったいうことか。じゃけえ暴力に屈するという事かね。それがこの国の正体かね」と。

私は、すずさんの慟哭に吉本隆明を重ねてしまう。吉本隆明はこう書いている。

「わたしは徹底的に戦争を継続すべきだという激しい考えを抱いていた。死は、すでに勘定に入れてある。年少のまま、自分の生涯が戦火のなかに消えてしまうという考えは、当時、未熟ななりに思考、判断、感情のすべてをあげて内省し分析しつくしたと信じていた。」

「神やぶれたまはず」の現人神 - HPO機密日誌

吉本隆明は当時二十歳前後か。すずさんと年齢的には重なるのではないだろうか。このすずさん、吉本の慟哭こそが当時の方々の偽らざる想いであったと受け止めたい。政治的な分析、思想的な批判などは、彼らの想い、嘆きと比べればどうでもいい。

本当に、「この世界の片隅に」は静けさと激しさがある。

konosekai.jp

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

NHKというダイレクトマーケティング

最近よくNHKを見る。もうファンと言ってもいいほどだ。気がついたのは、NHKの番組とは、NHKの番組をダイレクトマーケティングするために存在していることだ。例えば、今日のNHK総合の番組表の一部。

NHK番組表160107-1

NHK番組表160107-2

NHK 番組表

要は「直虎」の宣伝を兼ねた番組ばかりだと。ちなみに、昨日のスタジオパーク浅丘ルリ子。「直虎」の今川義元の母役。この他に、番組と番組の間のCMは数え切れない。つまりは、NHKの番組とは、NHKの番組を見せるためにあるのだ。これはまさしく、ダイレクトマーケティング、コピーライティングの古典、シュガーマンの「10倍売る人の文章術」そのままだ。

この「10倍売る人の文章術」という本自体が壮大な釣りなのだ。どうしてもこの本を読むと人に勧めなければならない誘惑に駆られる。コピーとはボディの1行目を読ませるためにあり、ボディの1行目は2行目に読み進める為にあると・・・、以下最後の行まで続く。コピーの伝えたい内容など、二義的なものだなのだ。つまりは、コピーからボディまですべては「釣り」なのだと。

http://hpo.hatenablog.com/entry/20070422/p2

民放でもここまでは徹底しないだろう。NHK恐るべし。

「道草」読了

私、いったい、読了するまで何ヶ月かかってんだよと。読書量がおちるにもほどがある。

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「道草」は、金が足りないだの、金をくれだの、金を借りるだのの話しが終始。養子にしてまで子供を育てるのも、将来自分の面倒を見させるためだと。夏目漱石の小説としては、異色といえば異色だが、「夏目漱石の妻」を観た後では、これが漱石の時代の生活なのだと受け止める。妻とのやりとり、養父とのやりとり、親族とのやりとりなど、自伝的要素が強いのが「道草」だと。

hpo.hatenablog.com

明治から大正にかけての時代は、一応の平和を保っていた。そう、「三四郎」のような恋愛すらも花開いた時代。自由が謳歌されたとも言える。しかし、この後、時代は大変暗い方向へ暗転する。人口の面からも、騒乱の予感という意味でも、現代はずっと夏目漱石の時代に戻っているような感覚がある。

いま私が恐れるのは「ぼんやりとした不安」を抱えながらものほほんと生活していた三四郎の後継者である我々は、またこうした騒乱の世紀を生きるのことになるではないだろうかという恐怖だ。与次郎の「ダータ・ファブラ」="de te fabula."とは、「ほかでもないあなたのこと」という意味のラテン語なのだそうだ。そう、どのような時代が来てもただ自分自身の問題としてとらえ、逃げないということ以外道はないのだ。

[書評]三四郎 only yesterday: HPO:個人的な意見 ココログ版

強いて「道草」の時代、人々の生き方と現代を比べれば、ずっと国家に依存する率が高いということかもしれない。特に年金に代表されるように、子供を育てなくても老後の面倒、病気になった場合のケアは公共に依存できる。まあ、しかし、それこそが100年前と比べて未来への最大の陰となりそうだと予感している。

信徒発見

先日の長崎行きでは、大浦天主堂に伺った。いただいた、パンフレットがとてもわかりやすかった。

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大浦天主堂

「こころの自由、ここにはじまる」とは、まさに長崎の隠れキリシタンの方々のためにある言葉なのだろう。250年もの間、司祭もないまま弾圧を逃れて信教を守った例というのは、世界中で他に例があるのだろうか?

christian-nagasaki.jp

私は、遠藤周作の「沈黙」は日本におけるキリスト教の変容、そして吸収で終わり、明治以降のキリスト教と全く断絶したものだと思い込んでいた。イスラエルに向かう飛行機の中で遠藤周作作品を読んだ時の感激と宗教の重さに圧倒されたことを今も覚えている。セバスチャン・ロドリゴの伝道は歴史から見れば空しく終わったのだと想っていた。

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

chinmoku.jp

セバスチャンと「バスチャンの予言」との関連は明白ではないが、遠藤周作が知らなかったわけはない。

「バスチャン」とは、徳川家光のころに、深堀(長崎)平山郷出身の治兵衛という名の伝道士であったといわれています。おそらく、殉教者聖セバスチャンの霊名をいただき、それが「バスチャン」に変化したのでしょう。
(中略)
バスチャンは、「バスチャンの予言」といわれる次のような予言を残しています。
①お前たちを7代までは我が子と見なすが、その後は救霊は難しくなるだろう。
②コンヘソーロ(告白を聞く司祭)が、大きな黒船に乗って来て、毎週でも告白ができるようになる。
③キリシタンの歌を、どこででも大声で歌って歩けるようになる。
④ゼンチョウ(異教徒)に道で出会ったときは、先方が道を譲るようになる。

Laudate | キリシタンゆかりの地をたずねて

これもまた大浦天主堂のパンフレットで知ったのだが、この後「浦上四番崩れ」と呼ばれる迫害をこの隠れキリシタンの方々は受けることになる。幕府の弾圧による原島における島原の乱、数々の迫害に遭ったにもかかわらず信仰を守り通した、この方々に驚嘆の気持ちをもたざるを得ない。

島原の乱 - Wikipedia

繰り返すが、「こころの自由」とはこの方々にこそふさわしい。日本にも「自由」を希求する真摯な方々がいらしたことを誇りに思う。

「10年後も中国人に爆売りする方法」

タイトルは明らかに編集がつけたと想われる。本書は正統に、中国からのインバウンド需用にどう対応していくかを論じている。

10年後も中国人に爆売りする方法

10年後も中国人に爆売りする方法

確か、本書はウェブ上の情報で購入を決めた。しかし、その出典が思い出せない。元ブログ主に感謝したい。本書の内容は中国人観光客だけでなく、インバウンド全体に適用可能な「原理原則」を表している。著者の序文にこうある。

本書では、マクロ統計だけでは見えてこない中国人の経済状況や、インバウンドの実情を解説すると共に、具体的な対応策について話しています。知られざる中国人の消費性向や今後目指すべきインバウンド・マーケティング戦略も詳しく紹介をしています。

本書のカバーする領域は広く、医療ツーリズムも同様に統計で現れない部分まで本書で語られている。

「統計だけでは見えてこない中国人」を、例えば本書のインタビューで株式会社シートリップジャパンの梁社長はこう表現している。

私は何度か経験があるのですが、中国社会で大成功された年配のお客さんを連れて京都や奈良に行って、法隆寺を見てもらうとすぐに涙を流します。何百年も前の土の壁を見て、10分くらいずっと涙を流している人もいる。また、奈良の博物館を見学して出てくると「展示してあるのは、どれも中国のものです。日本にあって本当によかった」という人もいます。彼らは、戦争や奪い合いについて不平を言っているわけではなく、「日本人に大事にされていよかった」と言っているんです。逆に中国に残していたら文化大革命で全部なくなっていたでしょう。

本書は2016年4月の出版だが、著者はすでに「爆買いバブルは今年で終わる」と喝破している。実際、私が昨年7月に羽田空港国際ターミナル見学に行った時点で免税品引き取りカウンターはがらだらだった。越境ECの発達もあったろうが、ほんの1年前には免税店ではかごに2つも、3つも、電化製品をいっぱいにつめて買っていた中国人の姿を想うとあまりに変化は激しい。

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では、どうしたらよいか?本書に指摘されるまでもないかもしれないが、個々人へのおもてなし、中国人向けでなく日本人向きのおもてなし、サービスをインバウンドのお客様に提供することだと。

中国では、スマホは情報を収集するだけでなく、むしろ情報発信でよく使っています、彼らは自分で写真を撮ってSNSにアップし、どんどん情報を発信しているのです。そこには中国人の気質が大きく関係しています。彼らは、自分の体験したことを「自慢したい」「多くの人に知ってもらいたい」という欲求が強い。だから、1秒でも早く、一つでも多くSNSにアップしようとします。
(中略)
そして、中国人はマスコミからの情報を信用することはほとんどありませんが、SNSの口コミによる情報に非常に興味を持ち、有名なブロガーや自分の友人や親類からの情報こそを信じています。

あるいは、映画に取り上げられることが大きいと。一番手っ取り早い地元観光の手法は中国の映画をその場所で撮ってもらうことだとまで言い切っている。例えば、タイ人で成田空港が人気があるのもタイの人気俳優が出た映画で舞台になったからだと聞いたことがある。

また、ファンづくりのためにはも、インバウンドだけでなく、工芸品や、日本食のアウトバウンドが必要だと指摘する。例えば、偽物ではなく本物の寿司職人、本物の寿司の具材を中国や、タイで展開する飲食店を国をあげてバックアップする。成田が取り組んでいるように、本物の食材をスピーディに輸出出来る体制を整えることなどが、文化のアウトバウンドにつながり、寄せて返す波のようにインバウンドにつながると。

民泊についても触れているがそれは稿をあらてめ別の機会に論じたい。最後に触れておきたいのは本書が指摘する医療インバウンド。

医療インバウンドで訪れる人の中でも特に増えているのが、中国人です。「国際医療交流の取り組み状況に関するアンケート」(2012年)によると、居住国別の外国人患者の受入人数では、2012年度も2011年度も「中国」「韓国」「ロシア」「米国」からの受け入れが多く、特に「中国」はどちらの年度も全体の約半数を占めているのです。(中略)私は中国の人に関する医療インバウンドのチャンスは地方にこそあると想っています。すなわち、「地方で人間ドックと観光をセットにして中国人に提供する」のです。

この流れの中で成田の取り組みに触れてもらっているのは嬉しい限り。

こうした中で、国家戦略特区に指定されている千葉県成田市国際医療福祉大学の医学部新設の計画が認められました。医学部の新設は東日本大震災からの復興目的を除くと実に38年ぶりとのことです。教員や学生も海外から受け入れ、多くの科目で英語で授業を行うと聞いています。外からの患者に対応できる医師を育成し、医療インバウンドの拡大を図る。既存の医師会の発想ではできないことです。こうした取り組みを積極的に進めていくことが今後の日本の医療業界の突破口であろうと思います。

日本の人間ドックの素晴らしさは多くの人が認める。特にPETの需用があるらしい。

「この前日本で人間ドックにかかったけど、あれだけの検査を半日で終わらせて、高級ホテルのシェフのランチが食べられるなんて驚異的!米国で同じことをしようとしたら、1週間かかって、金額も3倍、4倍かかる」と。なんでも人間ドックにかかろうと想うと、日本以外ではX線ならこころ、MRIならここ、胃カメラならここと、何カ所も病院をまわらないとならないらしい。

There ain't no such thing as a free lunch! - HPO機密日誌

うちは(旅客機の)クルーの方も利用されています。そういう方々の中には、日本で医療を受けると会社の保険が使えること、自国の医療が信頼できないこと、日本の薬は大変効くと評判なことなどから、わざわざ夜に病院に行きたがる人がいます。ほぼ毎日何人かいらっしゃるので、ナイト勤務のスタッフがアテンドすることもあり、大変です。昼間だったらタクシーなどで行ってもらうのですが。

ホテルのメディカルツーリズム - HPO機密日誌

なにはともあれ、人口減少の日本でこれからも伸びていくことが予想される数少ない産業分野が観光だ。よくよく勉強し、見て、しっかりと取り組んでいきたい。

正月三日

今日は、親族ですごすことができた。平穏な年末から正月三が日を過ごせた。こころから感謝したい。

この休みの間に観た映像ソフトも充実していた。

Doctor Who: the Day of the Doc [DVD] [Import]

Doctor Who: the Day of the Doc [DVD] [Import]

wwws.warnerbros.co.jp

それと、成田が取り上げられたこの番組。

www.nhk.or.jp

もう大感激。

容赦のないゴルフ場

正月二日なのにお仲間とゴルフへ。いやもうぼろぼろ。コースのせいにするわけにはいかないが、先日の小見川東急とはまるでちがって容赦のないコースだった。しかも、そこの会員なのでこれからもずっとまわることになる。いやはや、鍛えられそう。

hpo.hatenablog.com

小見川東急はなんというかいい意味で「優しい」コース。下手はへたなりにカバーしてもらえる。林の中に打ち込んでも、OBラインまでは余裕があるのでなんとかカバーショットができる。名前は出さないが、今日まわったコースは容赦がない。ペナルティのラインは谷底までくだっている。ほんのちょっとティーショットをミスするだけで、ペナルティ。その上、フェアウェイウッド系がまるで当たらないか、もしくはあたっても大きく右に出る球となってしまった。ぎりぎりラテラルウォーターの手前でボールが止まったと安心してショットすれば、シャンクして結局池の中。アプローチウェッジまでシャンクもどきを連発するなどいいところがひとつもなかった。

それでも、ティーショットはまあまあ。よくよく反省して次につなげたい。