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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

国立歴史民俗博物館、「中世の古文書 −機能と形−」展

たまたま行って来た。京成電車の交通広告が出たときから、気にはなっていた。

中世の古文書 −機能と形−

歴史にみる震災|企画展示|展示のご案内|国立歴史民俗博物館

網野大先生の「日本の歴史をよみなおす」と大変重なる。って、前回行ったときの企画も網野史学と重なったなぁ。

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

展示のポイントは、この方が十二分にまとめてくださっている。

また、たまたま国立歴史民俗博物館の小島道裕教授の解説を聞けたのも大きかった。少しはにかみながら、「いや、この毛利元就の古文書の由来だけで一時間話していられるんですけどね」と情熱を込めて、大好きを語ってくださったのは本当に印象的だった。この展示の観覧体験が小島教授のお陰で百倍にふくらんだ。

小島教授

中世の古文書-機能と形-|企画展示|展示のご案内|国立歴史民俗博物館

今回の展示の「機能と形」というサブタイトルは誠に展示内容を表している。古文書の花押を書く場所ひとつで相手を重んじているのか、命令として発しているのかひとめで分かるという。小島教授曰く、「古文書は単なるテキストではないんですね、保証という意味では『ゆびきりげんまん』の約束のように呪術的な意味を持つものもあります。また、最高権力者として北条氏の兄弟二人*1や、秀吉と秀長が同じ権威を示す形式の文書を作っている時代はその後、必ず乱れます」と。

たまたま午前中に白川静先生の「字統」を読んでいた。文字の成り立ちが呪術から始まったという話しも小島教授の話しと重なったのは、浅学な私の悪い話しを不用意に広げすぎる悪いくせ。

字統 新装普及版

字統 新装普及版

本業の関連でいえば、土地の譲渡の古文書が興味深かった。京都の有る土地の売買について、数世紀にわたる取引の記録が連続的につなげられている展示が興味深かった。文字通り、爪に墨を塗ってとった「拇印」までつかって連続性を保っている。しかも、途中で女性のひらがなによる文書もはさまれている。再び、小島教授曰く、「中世の特徴として、女性が力を持っていて、財産権ももっていたのですね。(中略)この爪の形をみていると、この女性の姿まで見えてきそうです」と。また、時代によってお役所がどれだけ介在したかも当時の政治、経済の状態をよく反映していると。

これは我々の業界ではついこの間電子化されるまで保たれてきた伝統だと言える。土地の取引の時に、ついこの間まで下手をすると明治くらいまで遡る和紙に墨書きに朱印の載った権利書が授受されてきた。もちろん、取引、登記のたびに新しい権利証(登記済証)が発行されるのだが、昔の権利証も和紙をこよりにして一緒に閉じておくことがよくあった。あ、いや、さすがに私が土地取引に実際にかかわった時代は、表紙にステープルだったか。

それにしても、中世の古文書、一番来るものだと八世紀なので1300年近くも前の文書と現在の処々の文書とが同じ形式で書かれているってすごい。まして、現代に生きる我々がまがりなりにもそうした古文書を読むことができ、爪の先まで感じられるという歴史の連続性に感激した。


■追記

小島教授ご自身による熱意あふれるつぶやき発見。

*1:小島教授はちゃんと話してくださったのだが、私が忘れてしまった。あとで調べる・・・、たぶん。