HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

非線形現象を線形思考できるか?

いうまでもなく大概の世の中のものごとは非線形な仕組みで動いている。経済物理学の知見によれば、株価や為替の動態は典型的な非線形な過程である。複雑で予測不可能であっても、株価や為替などの動向はマンデルブロフラクタル式によりシミュレートすることができる。これまた大概の非線形現象と同様に、後づけで見ればべき分布する。誰を好きになり、誰を嫌うのかという女心も非線形な過程で予測可能であることは明らかだ。「歴史はべき乗則」を読めば、地震、山火事、第一次世界大戦など、非線形な過程の例にことかかない。

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

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非線形科学 (集英社新書 408G)

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タレブの成功を例に出すまでもなく、私たちのごく普通の思考は線形であるために、こうした非線形な過程を予測することはできず、ほとほと手を焼かされる。リーマンショックの前に株価の予想がついていれば、タレブのように一生働かなくとくともよいだけの資産を築けていただろう。女心が読めてしまえば、一生を穏やかにすごせるであろう。

では、私たちには非線形な過程を予測することはできないのか?どうもそうではないらしい。いろいろな方とお会いしていると、どうも何人かの方は多数の相互作用を含む非線形な過程をイメージし、予測することができるようなのだ。どうしようもなく不思議なのだが、考えてみれば私たちの脳神経のつながりこそ非線形である。

以前も書いたようにそもそも線形にしか展開しない「私」という意識すら幻想である可能性がある。最近の脳科学の研究成果によれば、「私」がボールを認識して、「私」が「打て」と指令して、バットをボールにジャストミートさせるには、脳神経の伝達スピードは遅すぎる。「私」の後ろに誰かがいて「私」にボールの認識を与えながら、同時に「打つ」動作の指令をだしているとしか考えらない。実際には後ろの誰かは存在せず、脳内の非線形な過程がジャストミートを可能にしているのだという。

前頭葉は脳の社長さん?―意思決定とホムンクルス問題 (ブルーバックス)

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であれば、「私」を捨ててしまえば、思考はおのずと非線形型になり、複雑な相互作用を含む過程を脳内でシミュレートできるようになるのではないだろうか?

ま、ここで展開したロジック自体が線形論理であるから、保証のほどではないが。