HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「小倉昌男 経営学」

本書は経営にかかわる者にとって必読書だ。考えに考え抜き、決断し、徹底的に行動する経営者の姿がご本人の口から平易にわかりやすく書かれているという希有な例だ。

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

Amazonの商品紹介が見事な要約になっているので、遠慮会釈なく引用させていただく。

「儲からない」といわれた個人宅配の市場を切り開き、「宅急便」によって人々の生活の常識を変えた男、小倉昌男。本書は、ヤマト運輸の元社長である小倉が書き下ろした、経営のケーススタディーである。

全体を通して読み取れるのは、「学習する経営者」小倉の謙虚さと、そこからは想像もできないほど強い決断力である。成功した人物にありがちな自慢話ではない。何から発想のヒントを得たか、誰からもらったアイデアか、などがこと細かに記されている。講演会やセミナー、書籍、マンハッタンで見た光景、海外の業者に聞いた話、クロネコマークの由来…。豊富なエピソードから伝わってくるのは、まさに学習し続ける男の偉大さである。

一方で、並々ならぬ決断力を持っていたのだと思わせる記述がいくつかある。宅急便に注力するため、大口の取引先であった松下電器との長期にわたる取引関係を終結させたこと、三越岡田社長のやり方に反発し、「とてもパートナーとして一緒に仕事をしていくことはできなかった」として取引関係を解消したこと、運輸省を相手に訴訟を起こしたこと…。いずれも確固たる論理がその根底にあった。それにしても見事な決断力と言わざるを得ない。

終わりの部分で紹介されている宅急便の各種サービス内容や、有名なNEKOシステムなどの話は、流通・物流の関係者以外には興味がわかないかもしれないが、全体的に読みやすく、興味深いエピソードが満載なので、読んでいて飽きることがない。経営者としての小倉の人となりが伝わる、好感の持てる1冊である。(土井英司)

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中国の物流の近代化がまだまだ進んでいないと聞く。中国に小倉氏のような経営者が出なければ、ネット通販は発達してもどこかでボトルネックが生じて、発展が止まるだろう。

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ちなみに、本書を読んで人の世の発展とは「一人をもって起こり、一人をもって滅ぶ」のだと改めて実感した。経済学でマクロに資本主義、自由主義を論じるよりもイノベーターがいかに「獣のような経営者魂(Animarl Spirits)」によって生産性を飛躍的に向上させて来たか、どうやったら生産性を革命的に向上させられるようになるのか、をよくよく学ぶべき。

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